10代の孤立の解決は大人の責務|御堂筋税理士法人の才木代表とD×P今井の対談
認定NPO法人D×P(ディーピー)は、多くの方々の寄付によって活動している寄付型のNPO法人です。
今回は、日頃からさまざまなご支援を頂いている、御堂筋税理士法人の才木代表と、D×P代表今井の対談企画をお届けします。
また、今回の記事の執筆には、株式会社ストーリーテラーズの高野美菜子(こうのみなこ)さんにご協力いただきました。
日本で食べる物に困っている若者がいるなんて…
今井:才木さんと初めてお会いしたのは、2017年。僕の高校時代の友人が、たまたま、御堂筋税理士法人で税理士として働いていたことがきっかけで、才木さんをご紹介頂いたんですよね。
才木:そうでしたね。
「才木さん、日本には、食べる物がなくて困っている若者が、こんなにもたくさんいるんですよ」
と、言われたときは正直、「こんなに豊かな日本で、食べるものに困る若者がたくさんいるなんて、そんなわけがない」と思いました。
でも、両親から虐待を受けている若者のこと、どこにも居場所がなく不登校になる学生のこと、自ら命を断つ若者が増え続けていること、といった、10代の若者を取り巻く現状を今井さんからお聞きするうちに、「これは決して、ドキュメンタリー番組で見る遠い世界のことではない。身近で起きていることなんだ」ということが実感として分かって…。今まで知らなかったこれらの事実を知り、大きな衝撃を受けました。
今井:僕たちは、ユース世代(13歳〜25歳)を取り巻く現状をリアルに知っているので、お伝えする話にもリアリティが出ているのだと思います。ユキサキチャットでLINEを使って全国の若者からの相談に乗ったり、大阪ミナミのグリ下から徒歩5分の場所に、居場所のない若者が集まれるユースセンターをつくったりして、D×Pは創業以来ずっと、ユース世代の生の声に耳を傾け続けてきましたから。
※グリ下…虐待や不登校などによって家や学校に居場所のない10代20代の若者たちが集まる場所
※ユースセンター…学校でも家庭でもない、若者の第三の居場所
そんななか、才木さんはいち早く支援の重要性に気づき、お話した後すぐに行動を起こして下さったことが印象的でした。「若者の自己責任論」という風潮が強い、いまの日本で、才木さんのようにピンときてすぐに動いてくださる方は珍しいので、とても嬉しかったです。
才木:僕は、良いと思ったらすぐに行動に移す性格なので…(笑)今井さんの話を聞いて「これは子どもたちの問題ではなく、僕たち大人の問題だ」と思いました。世界的に見ても、豊かで、恵まれている国、日本。でもそんな豊かな日本で暮らす若者が、周囲に絶望し、自分の将来を描くことすらできていない。
今後、労働人口がどんどん減っていく日本で、「若者が自分の未来に可能性を見出し、チャレンジできる国にしていくのは、我々大人の責務だ」と思ったんです。また、今井さんの誠実さ、あくなき探究心。その姿勢に心を打たれたことも大きかったですね。
今井:有難うございます。そんな風に言っていただけて嬉しいです。もはや日本は、「40代50代の経営者の皆さんが知っている日本」ではありません。事実、D×Pが毎月行なっている若者への食糧支援の数も、去年の1.8倍に増えています。「いまの日本の現状を、包み隠さずに伝えていくこと」草の根活動的ではありますが、この現状を発信し続けることも、僕の使命だと思っています。
御堂筋税理士法人とD×Pの関係性
今井:御堂筋税理士法人さんとは以前、TAPプロジェクトでもご一緒させて頂きましたよね。「若者を採用したい企業」と「D×Pの支援で社会に飛び立とうとしている若者」をつなげる採用プロジェクトでした。
才木:はい。TAPプロジェクトは、士業のプロである当社が、企業に対してNPO、NGOへの寄付を促すことで、CSR、マーケティング、採用に役立てていただく目的で立ち上げました。当社のクライアントのなかには「人の採用に苦戦している。たとえ採用できても、入社後のミスマッチにより早期に退職してしまう」という悩みを持つ企業が大変多いです。その原因の一つに「入社前の企業と求職者の関係性が浅い」という点が挙げられます。
今井:リファラル採用でミスマッチが起こりにくいのは、知人や家族を介しているため両者の関係性が深く、入社前にお互いの状況を理解した上で採用に至るからですよね。採用がうまくいく鍵は、掘り下げていけばいくほど「関係性にある」と思います。
才木:まさにその通り。であれば、「クライアント企業の事業内容、社風、社長の考え方」をよく知る当社と、「支援した若者の特性や背景」をよく知るD×Pが協力し、リファラル採用に近い形で企業と若者をつなげられれば良いのではないか、と考えました。クライアント企業は若手社員を採用でき、若者は就職し、D×Pは企業寄付も増えて、みんながWIN-WINになる絵が描けたんですよね。
実際にこのTAPプロジェクトを通じて、D×Pがサポートした若者が当社のクライアント企業であるビルメンテナンス会社に就職しました。彼はいまでも、その会社で働き続けています。嬉しいことですね。
企業寄付の発信と、これからのこと
今井:才木さんは、障害を持つ実業家のサポートもされています。D×Pの若者支援や、障害を持つ方の支援…子どもたちに対して、何か特別な想いがおありなのでしょうか?
才木:「子を持つ親として、子どもが持つ可能性の芽を摘まないために、自分なりにできることをしたい」という想いがあるからです。僕は、五体満足に生まれ、愛情深い両親のもとで育ちました。その後、親になり、幼少期は多少厳しく子ども達に接した時期もありましたが…(笑)3人とも、立派に成長してくれています。いま思えば、とても恵まれていたんですよね。
だから今度は、僕が、ハンデを背負っている子どもたちに対して、できる限りの支援をしたいと思うようになりました。
そこで数年前から、畠山さん親子が運営されているHI FIVEとD×Pをメインに、支援させていただくようになったんです。
今井:有難うございます。才木さんの想いをお聞きできてよかったです。ここで少し、経営的な観点の質問をさせて頂きたいのですが、D×Pへの法人寄付や支援を通じて、経営にプラスになったことや、メリットを感じることはありましたか?
才木:そうですね…正直経営へのメリットについては、あまり考えていませんでした。というのが、知れば知るほど「もっと出来ることがあるはずなのに、まだまだできていない」と自分の至らなさを感じる場面が多いからです。金額面というよりも、その他も含めた支援という意味で、です。
今井:なるほど…。前回対談させて頂いた、リツアンさんは、法人寄付や支援のことを積極的に発信されており、企業としての信頼性が向上したとおっしゃっていました。法人寄付をしてくださる企業のなかで、「自社が寄付していることを発信されている」企業は、実はとても少ないんです。「もっと積極的に発信すれば、リツアンさんのように、CSR、広報、企業価値向上につながるのに、もったいないなぁ…」と感じることがよくあります。
才木:そもそも、こうした広報の重要性に、われわれ中小企業の意識が向いていないのかもしれませんね…。
今井:御堂筋税理士法人さんのような影響力のある法人が、発信して下されば、寄付の輪もどんどん広がっていくと思います。これからはぜひ、積極的に発信していただけると嬉しいです。とはいえ、才木さんは、身近な方々に、D×Pのことをたくさん伝えてくださっていますよね。
才木:はい。小さなことではありますが、家族や周囲に「D×Pのこと」や「10代を取り巻く現状」について、話をする機会は増えました。実は妻が最近「子育ても一段落したから、これからはボランティアもやってみたい」と言うようになり、「今井さんのところでも、何か自分ができるお手伝いがありそうだ」という話をしていたところです。
今井:とても嬉しいです!小さなことかもしれませんが、そうした皆さんの発信が、支援の輪を広げていくことにつながりますから。毎月継続して寄付をする方のなかには「私は少額しか寄付できないから…」と言う方もおられますが、全くそんなことはありません。皆さんひとりひとりの継続寄付が、D×Pの活動を支えているんです。本当に有難うございます。
では最後に、D×Pに求めること、支援者として期待することについて、教えて頂けますか?
才木:実際にD×Pの支援を受けている若者と、話をしてみたいですね。
「どんなタイミングでD×Pと出会ったのか」
「いま、10代の若者を取り巻く状況はどうなっているのか」
「何に困っているのか」
より現場に近いところで、リアルな話を聞いてみたいです。とはいえ、僕たちはその道のプロではありませんから、僕たちの代わりにこの大きな社会課題解決に挑んでくれているD×Pさんには、「有難う」という気持ちでいっぱいです。これからも、支援させてもらいます!
今井:有難うございます。D×Pが出会う若者は、これまでの周囲との関係性から大人を信用していないこともあります。まずは関係性をつくっていくことから始めています。実際に若者と話をしたいという経営者の方もいらっしゃるのですが、若者と接点をつくることはもう少し時間がかかると思います。サポートをした若者からは、学業に専念できるようになりました、就職しましたなどの声をたくさんもらっています。何かしらのタイミングでD×Pと出会った若者と話すみたいな機会をつくれたらなと思っています。
これからも頑張ります!
執筆:高野美菜子(株式会社ストーリーテラーズ)
NPO法人D×Pは、多くの皆さんの寄付により支えられています。
この記事が、ひとりでも多くの方の目にとまり、寄付の輪が広がっていきますように。
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