「甘ったれるな」「そんなんじゃ社会に出てやっていけない」と声をかけていませんか? 五月病アンケートでわかった、学校に通えない子どもたちの本音。
「学校に行きたくない」という言葉をいざ自分の子どもの口から聞くと、心配で取り乱してしまうかもしれません。あるいは、それは甘えであると叱ってしまうかもしれません。
そんな大人の反応を見て、子どもたちが言葉にすることを諦め、引っ込めてしまっている声はないでしょうか?
連休明けは、子どもたちが学校生活にリズムが合わせづらくなる時期。わかりやすいのが五月病です。これまで大学生や新社会人がなるものというイメージがありましたが、最近では高校生・中学生、小学生から未就学児にまで波及していると言われています。
今年の新学期、大型連休や連休明け新型コロナウイルス対策の転換を受け、子どもたちを取り巻く環境に変化が見られました。D×Pでユキサキチャットの利用者を対象に「新生活に関するアンケート」を実施したところ、大人から「甘ったれるな」「そんなんじゃ社会に出てやっていけない」などと大人から頭ごなしに否定され、辛い思いをしている10〜20代がいることがわかりました。
GW明け、子どもたちはどんなつらさを抱えているのか。大人は、どのように選択肢を示していくべきなのか。子どもたちのリアルな声を紹介しながら、考えていきます。
ユキサキチャットとは?
認定NPO法人D×Pが運営する不登校、中退、経済的困難など10代のための進路・就職LINE相談窓口。コロナ禍で困窮する25歳までの若者に現金給付や食糧支援も実施しています。
それぞれの「学校に行きたくない」理由
「これまで5月ごろ(ゴールデンウィーク明け)に『学校に行きたくない』と感じたことや、実際に休んだことはありますか?」という質問に対しては、「はい」と答えた割合は約75%にものぼりました。
さらに、「今年4月以降から『学校に行きたくない』と思ったことや実際に学校を休んだことはありますか?」に対して「はい」と答えた割合は約53%で半数以上です。
学校に行きづらいと感じた時の気持ちを詳しく聞いてみると、その理由はさまざま。人間関係の悩みや、体調不良や病気、さらに、家庭状況の影響を受けている場合も。
「そんなんじゃ社会に出てやってけない」大人の対応に傷つく子どもたち
こうした子どもたちの声に、大人は十分に寄り添えているのでしょうか? その渦中にいる子どもたちは、自分で自分の心情が言語化できないことも。まずは否定せずに、なぜ不安を感じてしまっているのか、ていねいにその胸の内を聞いて対応を検討するのが理想的ですが、現実には多くの子どもたちが大人の対応で傷ついていることがわかりました。
「学校に行きたくない」という気持ちについて、親、学校の先生、周囲の大人たちに伝えたいことはありますか? という質問に対して、こんな声が寄せられています
学校に行くのは辛いけど、勉強はしたい。そんな子どもたちに選択肢がない。
さらに、子どもたちから寄せられた声を読み解いていて気づくのは、「学校に行きたくない」という気持ちと、「勉強をしたくない」という気持ちは必ずしもイコールではない、ということ。
冷静に考えれば、「学校に通うこと」と「勉強をすること」は全くの別物。しかし、周囲の大人はこれを混同しがちですし、実際に学校では勉強だけでなく規則正しい生活習慣や礼儀作法などを身につけてもらえるよう指導しています。
しかしその結果、学校生活では判で押したような集団行動が求められ、子どもたちに選択肢が与えられにくい、という抑圧の構造が生まれているのが見て取れます。
子どもたちの意思決定が反映されていない現実も
「子どもの自主性を尊重する」というフレーズは至る所で聞きますが、それが学校教育の多くの現場で実現されていないということは、今回集まった声が物語っています。
生徒ひとりひとりに寄り添う細やかな対応には相応の時間がかかります。教師個人の負担だけが重くなるということにならないよう、公教育のカリキュラムの抜本的な変化が必要です。
また、今年4月からの新型コロナウイルス対策の転換で、原則、学校でのマスク着用が不要になり、黙食を取りやめる学校も増えています。こうした変化に対しても意見を聞くと、こんな鋭い声も。
今、ルールを決めていく場に、子どもたちの声はどれほど反映されているでしょうか。そもそも、その声は無視されていないでしょうか。
ちょうど今年4月から、こども家庭庁発足に伴い、国や自治体は若者や子どもに関する政策策定において、当事者である若者、子どもの意見を聴くことが義務付けられたばかりです。
子どもの声をしっかり聴き、意思決定を尊重していく、という姿勢が、国全体、学校、そして、子どもたちと接する大人ひとりひとりに根付いていくことを願うばかりです。
こども家庭庁が発足し、「こども若者★いけんぷらす」という子どもや若者が意見を言える環境がつくられました。この取り組み自体は素晴らしいですが、現在はまだ子どもたちが使いやすいものではないと感じています。例えば子どもたちが普段利用しているプラットフォームでも意見を表明できるようになるなどの改善を期待しています。私たちも国や自治体が子どもの声を聴き、それが活かされる仕組みをつくることを一緒に進めていくことができればと思っています。
執筆:清藤千秋(株式会社湯気)/編集:熊井かおり
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