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寒空の下、集まる子どもたちや若者たちの話を 音楽と共に聴く夜にあったこと【今井紀明】

高校生ラップ選手権に出ていた10代のアーティストの曲を手持ちのスピーカーでかけながら歌っている10代の男の子と僕は話していた。

「ここにくると楽しんですよ」と言いながら、相方の男の子とも話す。「仕事帰りで、今日こいつに連れられて」きたという。

話しているうちに、「おおー、◯◯」と何人もテントにやってくる。寒い中、ヒーターもあるわけでもないのに、D×Pのグリ下にあるテントに20人以上の10代の子たち、中には中高生も来るのだが、19歳、20歳前後の子たちが集まってくる。何時間も、彼らは椅子に座りながら、スタッフたちとも話したり、グリ下で出会った子たちと話す。

トー横キッズ、グリ下などコロナ禍でニュースでもよく見かけるようになった。家に帰る場所がない、家出をしたり、生活環境が厳しかったりする子どもたちがくる場所としてメディアでも取り上げた。

D×Pでは、2022年の夏から、街中にいる若者が自由に使えるフリーカフェを試験的にスタートした。スタッフがテントを立て、お菓子や飲み物、生理用品やコンドーム等の無料配布を行ないながら、若者と対話し、つながりをつくっている。

そこに、僕はいた。ヒップホップやラップなども僕は割と聴いているので、馬が合った。3時間ぐらいいる中で、話せた子は数人だが文化の違いを感じた。僕はずっと話を聞き続けていた。ここでは、彼らの過去には触れることはできない。一回しかまだ会ったことがないし、許可も得たわけではないので詳細は書けない。ただ、言えることは、生活環境、本当に苦しかったんだろうな、と思うことは聞きながら多くあった。

僕はPTSDや引きこもりの当事者だった。しかし、友人たちのおかげで社会復帰し、現在では11期目になる認定NPO法人D×P(ディーピー)の代表を務めている。

約1.9億円ほどの財務規模のNPOで8割は寄付で運営しているが、運営している相談サービス「ユキサキチャット」には全国約1万人を超える高校生、若年層の登録があり、不登校や虐待、中退、困窮状態にあるという相談を毎日、毎日みている。

ユキサキチャットからオンライン相談に乗って、就職や進学、公的支援まで繋げているが、食糧支援や給付支援も実施してきた。2020年6月から実施してきた食糧支援は累計10万食を超え、現金給付は5000万円を超えている(2022年2月15日現在)。このうちの半分以上はこの1年以内で実施している。

緊急事態宣言やまん防が続いた2年で、物価上昇の今が一番厳しいと思う。

「ガスや電気が止められました」「家賃を滞納しています」「親から殴られて」「死のうと思っています」という厳しい状況にいる相談者からの相談が続いている。

オンライン相談が続いている現場もありながら、去年からミナミでのアウトリーチ事業を始めた。マネジャーが「やりたい」と話してくれていたので、経営としても様々なリスクがあったが、資金的な援助もなかなか満たされていなくとも試験的に始めたのだった。

今では関わるスタッフも多くなっている。スタッフが作ってきた場に僕は今日初めて来た。事業を始めた理由にもつながるのだが、ここにはオンライン相談などしない、そもそも相談ということをしないかもしれない子どもたちがいる。性被害を受けたり、親からの暴力など様々な困難なことが日々おこっている。先日も、ある子のSOSがきっかけで連携機関と対応したことがあった。

つながりをつくるために

僕は創業した時からひとりひとりの若者が希望を持てる社会をつくっていきたいと思っていた。今も変わらず、それを続けている。

しかし、子どもたちや若者たちの貧困は見えづらい。困難な状況にあっても、それは「自己責任」だという価値観が社会の中で広がり、希望が持てない社会を作り出してきている。その状況を変えたいと思い、セーフティネットを作りつつ、機会提供を現場で様々な機関やNPOと連携しながら日々動いている。

オンライン相談では約1万人ほどの登録者数になってきたが、まだ氷山の一角だ。街中にも多くの「つながり」を求めている子どもたちがいる。街中でも、待つだけではなく、しっかり僕らがアウトリーチして、セーフティネットの存在を伝えたり、使ってもらったりできる環境を整備していきたい。待つだけではダメなのだ。つながりを僕ら側から作らなければいけない。そう思って、スタッフたちと協力して、そして様々な行政の方々や企業、NPOの方々と共に、今日も動いている。

改めて寄付をお願いしたい。子どもたちの現状、本当に苦しいと思っている。助けて、と声を上げた時に、しっかりサポートできる環境を。民間からセーフティネットを一緒に作っていくことができれば嬉しい。応援等、よろしくお願いします。


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