D×Pタイムズ
D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
D×P×10代

今の時代は「正解がひとつじゃない時代」10代が考える、学校に行けないことを悩んでいる人に対してできること。

夏休みが終わる頃、不登校の子どもに向けて「学校に行かなくてもいい」「逃げてもいい」というメッセージを多く見かけます。「このメッセージについてどう感じますか?」とアンケートで尋ねると、13歳〜25歳まで307名から回答がありました。

悠(仮名)さんは中学生の頃から不登校となり、現在は通信制高校に通っています。悠さんとは、2019年にD×Pが通信制高校で実施した授業「クレッシェンド」で出会いました。クレッシェンドのワークのなかで、悠さんが考えるこれからのことやこれまでのことを絵を描きながら話し、今でも近況報告などをする関係が続いています。

「自分自身が不登校で失ったものがある」と話す悠さんにご自身の体験談や、学校に行けないことに悩んでいる人に対して周囲の人ができることについてお話を伺いました。

段々と引きずるようになって、中学2年生から学校に通わなくなりました。

悠さんが不登校になったきっかけを教えてください。

中学1年生のときに思ったより勉強についていけなかったり、体力もついていかなくて月曜日を休むようになりました。土日に遊び疲れて行けなくなって…という感じでしたね。それから段々とそれを引きずるようになって、中学2年生から学校に通わなくなりました。

もともと小学6年生の頃から休みたいときは休むという考えを持っていて、親も放任主義で「学校に行きなさい!」とは言うんですけれど、家から引っ張り出されるようなこともありませんでした。

※イメージ画像

ー不登校の間、何をして過ごしていましたか?

ゲームしたり…自作でパソコンを組んだりなどですね。起きたらずっとアニメをみるような生活もしていました。

初めてのパソコンは中学3年生の時にゲーム機を売ったお金で買いました。父親の知り合いでパソコンに詳しい人がいて、その人みたいになりたいと思って、学校を休んでいる間に自作パソコンを作っていました。

幼稚園の時から帰ってきたらずっと家にあるノートパソコンに触れていたということもあって、パソコンに対する愛が深いというか、試したいことがあったらとことん試して気づいたら朝になっていたりとか、それくらい好きなんですよ。今もパソコンについて知識がある方かなと思います。

悠さん提供。実際に組んだパソコン。

ー学校に復帰したのはいつ頃でしたか?

通信制高校に入学してから「このままじゃいけない」と思い、真面目に通うようになりました。けれどお金の問題に直面しました。

携帯電話を機種変更するタイミングで、代金が払えないかもしれないという話が親からあり、家にお金がないことに気づきました。そこからバイトをして家にお金を入れることを考えるようになりましたが、バイト先がなかなか決まらず…という感じでしたね。

それから学費も払えなくなってしまって…学校に通えなくなって、レポートを家で作成して提出する形になりました。それで精神的にクラッシュというか、学校に行くことに意味があると思っていたのに、また学校と隔絶された生活になりました。進級できる予定でしたが、そこでもう学校を辞めました。

ー学校に行くことの意味は何だと考えていましたか?

学校という環境に意味があると思っています。クラスメイトという存在があり、クラス単位で行動することも多くて、それに学校に行けば誰かがいて、話しかければ言葉が返ってくる。自然とコミュニケーションがとりやすい環境ですね。

(前の学校を辞めてから)今は別の通信制に通っています。大学のように授業を自分で選択する形式なので、周りが全然知らない人ばかりということも多く、話しかけるハードルの高さが全然ちがうと感じています。

(通信制高校は学校によってレポートのみ、通学も併用など様々な学び方を用意しています。)

悠さん提供。最近着ている服。

学校に行く以外の選択肢も用意してあげられるのであれば、その人は壁を破れるかなって思います。

ー授業や教育について感じることや意見はありますか?

「今は正解がひとつじゃない時代だ。」というセリフが好きなゲームにあって、今の時代はそのセリフの通りだと思っています。「コレは正しい」「コレは間違っている」と断言する人も少なくないと思いますが、今の時代って物事を決めつけるべきではないな…と。だから教育として、これは間違ってると頭ごなしに言うのではなくて、ひとりひとりの考えに寄り添うというか…できれば寄り添ってあげたほうが個性の尊重になるというか。

こんな10代の人が何を言ってるんだって感じですけど、デモとかみたいに、声を上げないと世界は変わらないし、発言することは大事かなって思っています。

学校に行けないことに悩んでいる人に対して、周りの人ができることってなんだと思いますか?

学校には行かないといけないとは思うけど、「行け」って言われただけでは行かないと思います。「勉強しろ」って言われてもするわけではないし、その人に道を示してあげるというか、選択肢をつくってあげることかと。

選ぶのは自分自身だと思います。学校に行くかどうかも自分の判断で最終的には決定されるから、そのために行かないことも選択肢のひとつとしてあって、行かなくても他の方法を考えるとか、家で勉強するとか、夢を追いかけるとか、学校に行く以外の選択肢も周りの人が用意してあげられるのであれば、その人は壁を破れるかなって思います。

ーくわしくお話をきかせていただきありがとうございました。


文部科学省が発表した「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、小・中学校における長期欠席者数 413,750 人(前年度287,747 人)。高等学校における長期欠席者数 118,232 人(前年度80,527 人)となりました。

調査の上では、長期欠席や不登校と一言にまとめられていても、ひとりひとりに背景があり考えがあります。わたしたちは、若者の声に社会を動かすヒントがあるのではないかと考えています。そんな彼らの声を社会へ届けていきたいと思っています。

D×Pは、若年層と関わるとき「否定せず関わる」ことを大切にしています。相手や自分の考え方、価値観、在り方を否定せずに、なぜそう思うのかと背景に思いを馳せながら関わる姿勢です。

他にもたくさんの声が届いています。ぜひ、ひとりひとりの状況を想像しながら“声”を読んでみてください。

「一概に休めばいい、行かなくちゃいけない、なんて言わないで」不登校について13~25歳、307人と一緒に考える


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