校内カフェで夏祭り!?コロナ禍による10代の“文化的機会”の減少。ひとりひとりに合わせた機会をつくるD×Pの取り組み。
「コロナで今年はないようなもんやん」これは、2020年の夏休み明けに定時制高校に通う生徒が話していた言葉です。本来であれば、友達と遊んだりアルバイトをしていたかもしれない夏休み。
10代にとってコロナ禍は、文化的機会の減少にもつながっています。
学校行事が軒並み中止・縮小。夏休みも事実上潰れ、最後の長期休みで計画した旅行がなくなった
2021年3月、13歳~25歳を対象にコロナの影響を尋ねるアンケートを実施しました。ユキサキチャットを通じて240件の回答が集まりました。
回答からは、遠足や修学旅行などの学校行事や部活、ボランティア活動、地域行事などさまざまな機会が失われていることがわかりました。
子どもの貧困と機会格差
いま、日本では子ども(17歳以下)の7人に1人が貧困状態にあるといわれています。日本における「子どもの貧困」とは「相対的貧困」のことを指します。たとえば、2019年 国民生活基礎調査で考えると年間127万円未満で暮らす生活です。相対的貧困は、その国の等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯のことを指します。
上記のアンケートに回答した240名に経済的な暮らし向きを尋ねると53.5%が「経済的に苦しい」と回答しています。
「相対的貧困」は、毎日の衣食住が困難な「絶対的貧困」とは異なり、衣服や住居の状況など外見的な要素からはわかりづらいことが多いです。そのため、周囲からのサポートが受けづらいという現状があります。相対的貧困にある子どもは経済的困窮を背景にさまざまな体験の機会に乏しいことが多く、進学や就職を含むさまざまな局面で不利な状況になってしまうこともあります。学校や地域での体験機会がコロナ禍によって減少すると、さらに文化的機会が得づらくなります。
2021年9月、文部科学省は「令和2年度 青少年の体験活動の推進に関する調査研究」において、家庭の収入水準に関わらず、体験活動(自然体験、社会体験、文化的体験)や読書、お手伝いを多くしていた子どもは、その後高校生の時に自尊感情(自分に対して肯定的、自分に満足しているなど)や外向性(自分のことを活発だと思う)、精神的な回復力(新しいことに興味を持つ、自分の感情を調整する、将来に対して前向きなど)といった項目の得点が高くなったと発表しました。
D×Pが10代に届ける機会
校内カフェで夏祭り!?定時制高校での機会づくり
2021年8月、夏休み明けの居場所事業では夏祭り企画を実施しました!D×Pの居場所事業は、安心できる居心地の良い空間を定時制高校のなかにつくる活動です。コンポーザー(D×Pのボランティア)、地域の方、他団体のスタッフが訪れることもあり、高校生が定期的に様々な人とつながることができる場でもあります。
経済的な事情に関わらず文化的機会を得られる場が、コロナ禍によって減少しています。D×Pの居場所事業では、日常的に通う学校のなかにもさまざまな機会もつくっています。
スタッフの声
これまでもクリスマスやお正月など季節行事や進路を考えるきっかけをつくる企画などを実施しています。
オンラインでの機会づくり
「白米食べてる?」 「いや、食べてない。炊飯器持っているんだけど、なんかパサパサしていて美味しくなくて」 「え、作り方教えてあげるよ!」自炊料理家の山口祐加(@yucca88)さんと、10代の会話です。ユキサキチャットでつながるひとり暮らしの10代とオンライン自炊講座を開催しました。
食糧支援を受け取る10代を中心にこれまで、延べ6名が参加。みんなで料理しながら、会話する時間になっています。
先日参加した相談者は「ファミレスのバイトが決まった。料理をするのは好きなので、冷食チンするところではなくて、きちんと作るところでバイトを探した。レパートリー増やしたい。」と話をしていました。
参加者の好きな料理をつくったり、参加者同士で作り方を教えるような企画があってもおもしろそうですね。
オンラインのでの企画は、「料理をする」などテーマ性や共通体験が明確な方が10代にとって安心して参加しやすいのでは?と考えています。学校のなかの「居場所」と違い、ふらっと訪れたり抜けたりしづらいことと、入室する前に「安心できる場」というイメージがつきにくいのかもしれません。
オンラインでも、「一緒に作る・これからのこと語る・自分の知ってることをシェアする」などを通じて、人とのつながりをつくっていける企画を今後も考えていきます。