明日を生きるお金がない若者たち-コロナ禍で困窮する若年層の約6割が借金や滞納を抱えています【#ひとまずごはん レポート】
2021年8月25日、認定NPO法人D×P(ディーピー)が実施するコロナ禍で困窮する若年層への食糧支援が1万食を超えました。このサポートは、新型コロナウイルス感染症による2020年5月の緊急事態宣言時より開始しました。2021年度の5ヶ月で昨年度の支援実績を超え、緊急支援のニーズが高まっています。
2021年9月9日時点で、食糧支援は合計11,460食・現金給付は合計620万円となっています。
令和元年労働力調査によると、15歳~24歳は、50.9%がアルバイト、契約社員など非正規雇用で働いています。また、若年層は飲食店や小売店など接客を伴う仕事に就いていることも多く、営業自粛などの影響を受けやすい状況です。経済的に保護者に頼れない若者にとって仕事がなくなることはもちろんのこと数時間のシフト削減であっても大きく生活がひっ迫します。昨年、仕事を失ったある若者は「ずっと、この部屋で天井を⾒上げていました」と話していました。働けない状況や経済困窮は、⼼⾝の健康にも⼤きく影響します。
日本財団が2021年8月31日に発表した、第4回自殺意識調査によると1年以内に自殺の念慮を抱いたのは15~19歳は15.8%と他の年代に比べて多いという結果があります。2020年度は子どもの自殺が過去最多となり「孤立」は大きな問題です。わたしたちは、食糧支援・現金給付をきっかけに困った時に頼れる人とのつながりをつくります。
D×Pの食糧支援・現金給付 最前線レポート
食糧支援・現金給付のサポートを希望する場合、本人の状況を詳しく知るために事前質問シートに記入していただいています。記入していただいた情報をもとに相談員と本人でオンライン面談を行ない給付等を決定します。事前質問シートに寄せられた回答から、食糧支援・現金給付を希望する若年層の背景をお伝えします。(回答集計期間は2021/6/1~2021/8/26まで。)
食糧や現金を必要とする若者はどんな人?
大学生、短大・専門学生が約4割でした。進学にともなってひとり暮らしをしていることが多い年代になります。
保護者に頼れないさまざまな事情
184名の回答のうち50%にあたる92名がひとり親家庭で育ったと回答しています。虐待などにより児童相談所による一時保護を受けたことがあると回答した人は17%、児童養護施設や自立援助ホーム・里親家庭などの社会的養護のもとで暮らしている・過去暮らしたことがあるという人は16%でした。
保護者に頼れない状況は様々です。「保護者が障害や病気を持っていて働きづらい」「家族もコロナの影響で収入が減っている・解雇されてしまった」など家庭も経済的に苦しい状況にあるとの声がありました。また、「家族から暴力をうけて家を出ることになったので、頼れない」など保護者がいない・連絡が取れないという声も聞いています。
支援希望の若年層の約6割が借金や滞納を抱えています。
面談の中で、「借金がある」という声も聞くことが増えてきたため2021年の7月から質問項目を追加しました。全体の58.4%にあたる73名が「はい」と回答しています。学費に充てる奨学金のほかに、生活費のために消費者金融からの借金やクレジットカードの滞納、スマホ代の未払いなど。利息によって金額が膨らんでいる状況にある人もいます。
14.8%の若年層が「収入がない」
収入がないと答えた人が全体の14.8%の45名でした。D×Pでは、仕事をする・福祉制度を利用するなど、本人の状況に合わせた方法で毎月20万円以上の生活費が得られることが選択肢を得るために必要だと考えています。20万円というお金は、生活を最低限送れるばかりでなく娯楽・交際・衣服などの文化的な費用や社会保険料の支払いなども含めて定義しています。食糧支援や現金給付を希望する若年層は、経済的にギリギリの生活のなかで心身ともに疲弊していることも多いです。
27.1%が誰にも相談できない。孤立する若年層
ぜひ、情報のシェアをお願いします。
ユキサキチャットの食糧支援・現金給付のサポートをどのように知りましたか?と聞くと、「いろいろ支援してもらうところを探している途中、友達が教えてくれました」「Twitterのリツイートで回ってきた」「お金がなくて困ってると話すと知人がサポートを探して教えてくれた」「関わっている他のNPOさんに教えてもらった」などの声がありました。皆様のご紹介やSNSでのシェアが、10代に届いています。ぜひ、今後も情報のシェアをお願いします。
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しませんか?
ひとりでも多くの10代に情報を届けるため一緒に発信しませんか?
本人が自力でこういった情報にたどりつくのは難しいことです。みんなで情報をリレーしながら生活に不安を抱える10代に届けていきましょう!
Twitterでつぶやく27.1%が困っていることを相談できる人が「いない」と答えています。面談のなかでは、周囲に頼れる人がいないことや、過去の経験から自分の困りごとを話せないなど、ひとりひとりの事情が伺えました。
いまあるセーフティネットから抜け落ちやすい若年層。
新型コロナウイルス感染症の流行から約2年。緊急事態宣言は4回に渡り経済的困難を抱える若年層への影響が長期化しています。
2021年9月1日に厚生労働省より発表された「生活保護の被保護者調査」の結果によると、生活保護の申請件数は約2万件となり、前年同月から13.3%の増加となりました。緊急小口資金等の特例貸付も、2021年8月28日時点で累計支給申請件数275万7388件、累計支給決定額は1兆1591億36億円に上っています。長引くコロナ禍によって、仕事を失った人や収入が減少した人が増えたと見られています。
しかし、孤立する若年層への支援は届きづらい現状があります。例えば、2020年度に世帯単位で給付された特別定額給付金も、若年層の本人の手には届かず、保護者に取られてしまったなどの声もありました。また未成年であるということで支援制度を使えない、頼れる人が周囲にいないことから申請できずにいる状況もあります。
給付金・奨学金などの制度に申請したことがあると答えた人は37.1%の69名でした。申請件数は奨学金が多くなっています。
頼れる人とのつながりをなくし孤立した状況になると、社会にあるさまざまなセーフティネットへ辿り着くことも難しくなります。自分で自分を追い込んでしまう前に、安心して生活できる環境を整えることが大切です。
コロナ禍で困窮する若年層に届けるD×Pの緊急サポート
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最大3ヶ月、月1万円を給付
現金給付
最大3ヶ月、月1万円を給付します。給付の目的は、生活費、家賃、学費の支払いや、ライフラインの滞納の解消などの支払いに充てることとしています。事情によって、一度に3万円の振り込みや4万円の追加給付を行なうこともあります。 -
約30食をすぐに届ける
食糧支援
約30食をすぐに届けます。届ける食品は、パスタやパスタソース、レトルトのカレー、缶詰、お米など。食糧支援を実施する相談者の多くは日用品も我慢していることが多いため、マスクや生理用品、ボディーソープなど必要なものがないかを選択式のフォームで尋ね、回答があったものを一緒にお届けします。
サポートの流れ
- 保護者など経済的頼り先があるか
- 貯金や借金があるかなど本人の経済状況はどうか
- 仕事をしているか、働ける状態にあるかなど収入見込みがあるか
- 公的なサポートを既に受けているか、今後受けられそうか
などを総合的に判断し、よりひっ迫した状況にある方に対して給付等を決定しています。支援を決定する場合も見送る場合も、支出の見直しや収入確保のため転職・アルバイト探し、利用できる公的支援、奨学金の申請などをユキサキチャットでサポートしています。
D×Pの食糧支援
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すぐに送る、
長期的につながる温めるだけで食べられるレトルト食品や、1日に必要な栄養素を補う完全栄養食など。手軽さと栄養を考慮し、ひとりひとりの事情に合わせた食糧を30食分、すぐに送ります。
その後も3ヶ月〜半年ほど長期的に関わり、生活の安定にむけた次のステップ一緒に考えます。 -
ひとりひとりが
受け取りやすく「ユキサキ便」と名付けた箱で送ります。食糧支援を受けることは、相談者が自分のユキサキに向かうこと。後ろめたく思わずに、受け取って欲しいと思っています。食糧の他にも必要なものがないかを選択式のアンケートで聞き、マスクや生理用品・シャンプー・歯ブラシなどの日用品も届けています。 -
人とのつながりや
文化的経験を得られる工夫ひとりひとりへの手紙を同封し、人とのつながりを感じられる体験をつくります。また。余裕のない生活をしていると文化的経験が得づらいことがあります。季節を感じられる食べ物や美術作品の印刷されたメッセージカードを同封するなど、文化に触れられる機会もつくります。
食糧支援や現金給付の目的は、生活費、家賃、学費の支払いや、ライフラインの滞納の解消などの支払いに充てることです。一緒にこれからを考えてくれる人とのつながりを得て、まずは精神的に安心できる環境をつくります。
D×Pの食糧支援・現金給付の実績
昨年2020年5月の緊急事態宣言時より開始した緊急サポート。2021年度の5ヶ月で昨年5月からの実績を超え、緊急支援のニーズが高まっています。
緊急サポートを届けた人のいま
Case 01
幼いころから虐待を受けていたこともあり家を離れることを希望しているAさん。ひとり暮らしをする資金を貯めるため、数年間の引きこもり状態を経てアルバイトを始めたのですが、コロナの影響で収入が減ってしまったと言います。現金給付をきっかけにやりとりを始めることができました。
Case 02
「NPO法人などは正直信用してないし馬鹿らしいと思っています。ですが本当に苦しいため相談させていただきました」と高校に通いながらひとり暮らしをするBさん。アルバイトの収入で生活費を賄っていましたが、コロナの影響を受けて収入が減っている状況でした。
サポートを届けた若者からの手紙
若者を長期的に支えていくために、ご寄付をいただけませんか?
2020年度は緊急支援として食糧支援や現金給付を実施してきました。しかし、状況がすぐに改善することは難しく、長期的なサポートの必要性を感じました。特に保護者に頼ることができない10代は深刻な状況です。本来、保護者から提供されるはずの基本的な経済援助をし、相談者自身が安心できる環境をつくっていけるようにサポートを行ないます。
D×Pでは、継続的に食糧支援や現金給付を続け若者の生活をサポートするための寄付を募集しています。若者がみずからの命を絶ってしまう環境に置かないように。わたしたちとともに支えてくださる方、ぜひよろしくお願いします。