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「また会えるかな?」と思える相手がいる希望。D×Pのクレッシェンドが積み上げる関係性

髪型ががらっと変わる、好きな人ができる、バイトを始める。

振り返ると短い半年間。あなたの半年間は、何がありましたか?

冒頭のできごとは、わたしたちD×Pが関わった高校生にあったものです。

D×Pの授業『クレッシェンド』は、ボランティアの大人である『コンポーザー』との対話を通して進みます。今回、寝屋川高校で行われた『クレッシェンド』は、全10回開催しました。

「雨が続いて大変だね」なんて会話をした6月から「肌寒くなってきたね」という話をする9月まで、いくつかの季節を感じながら、ゆるやかに。だけど、地道に関係性を積み上げ続けてきました。

この記事では、クレッシェンドのなかで生まれた「つながり」をお届けします。

クレッシェンドとは? 
通信・定時制高校で行っているD×Pの独自プログラム。高校生とD×Pのボランティア「コンポーザー」が対話する全4回の授業です。ひとりひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくります。4回の継続した授業のなかで次第に人とのつながりを得て可能性が拡がるように、音楽用語でだんだん強くという意味のクレッシェンドと名付けています。

DxPが通信制・定時制高校で行う授業『クレッシェンド』。ふだんは、1~2ヶ月間で全4回開催することが多いです。だから今回は、ロングラン。スタッフもどんなふうになるのかドキドキでした。

今の気分は「緊張している」。

第1回目のクレッシェンドの日。

「今の気分は、緊張している。知らない人がいっぱいだから。」と話す生徒がいました。

寝屋川高校で行うクレッシェンドは選択制。このプログラムを選んだ生徒が教室に集まります。普段から仲の良いメンバーと盛り上がっている生徒もいますが、緊張している生徒もいます。コンポーザーとスタッフも、1回目のクレッシェンドはどんな生徒がいるんだろうと少し緊張気味です。

みんなの緊張をほぐすためにも、『カプラ』というワークを行いました。積み木をみんなで順番に積み、高さを競うゲームです。

どんな積み方が安定するかを考え「安定するやり方に戻そう」と意見を言う生徒や高く積むのではなく、面白く積むことを楽しむ生徒など、それぞれの個性が見えました。
カプラを家に見立てて積んだり、手直しをしたりと違った意味で楽しそうだった。普段から物作りをするのか聞いたら、普段はあまりしない、とのこと。でも、楽しそうでした。
ほっさー(インターン生)

と、同じグループの生徒の様子をコンポーザーとして参加した『ほっさー』が振り返ります。コンポーザーは生徒ひとりひとりの様子を見て声をかけ、ワークをきっかけに関係性を深めていきます。

「水曜日の時間割は好きじゃないけど、この時間は楽しい。」

クレッシェンドの回数を重ねるごとに、教室に入ってくる生徒もコンポーザーもリラックスした表情が増えます。大人と高校生がお互いのことを知るために『すごろくトーク』というワークをしました。止まったマスに書かれている質問に答えながら、順番にコマを進めていきます。

行ってみたい場所を尋ねられた生徒は、『韓国』と答えました。彼のつけるブレスレットが韓国のアーティストのものだと気づいたスタッフのむらちゃん。「K-POP好きなん?」と聞くと「そう、かっこいいねんー」と話が広がりました。

ある生徒は、「携帯待ちうけの画面を見せて」というマスに止まったとき「これ見せたら引かれるから」と言いました。その言葉を聞いたコンポーザーは「いやだったらいいよ」と伝えましたが、話していくうちにアイドルの写真に設定した画面を見せてくれて、グループ内みんなでアイドル談義になりました。

人と接する時は見た目の印象だけでその人を決め付けないようにしている。

オトナが、自己開示をする『過去のジブン』。

過去しんどかったことやその時の気持ち、いま考えていることなどを生徒に話すワークです。コンポーザーの大切にしていることを聞いて、生徒自身が大切にしていることを聞くこともありました。

人の話を聞くのが好きだという生徒は、「人と接する時は、見た目の印象だけでその人を決め付けないようにしている。」と言います。不登校だったという生徒自身の過去や、尊敬できる先生に出会えて学校に通うようになったという話など、生徒自身のバックグラウンドに触れる機会にもなりました。

「夏休みは、何したの?」

8回目のクレッシェンドは夏休み明け。

スタッフのもっさんは、

2ヶ月ぶりに生徒に会うので、「どんな表情で教室に入ってくるだろう。どんな様子でその場にいるだろう。声をかけてもいいかな。話をしてもいいかな。」と、とにかくドキドキしていました。
もっさん(インターン生)

と振り返ります。

今回のワークは「ミニ自分史」。夏休みのできごとや、12月までにしてみたいことなどを付箋を貼りながら話しました。

これまでは、コンポーザーと生徒の1対1の会話が多かったのですが、付箋に書かれた文字をみて、生徒同士が関わり合う場面が増えました。

ある生徒が「夏休みに京都に行った」と付箋に書くと、他の生徒が「俺もその近くに行ったで」と話し出していました。コンポーザーとグループの生徒が話すと横で聞いてることが多かった生徒も話題がゲームのことに移ると、自ら会話に入っていました。

ある生徒は、教室内をぐるぐる回っていた僕を見て、「こっち来て」と呼んだんです。「免許取りたいねん。免許持ってる?オートマ?ミッション?俺は、ミッション運転したいねん。この学校通ってるうちに免許取りたいねんけどな」って。
 
そんな生徒の様子を見て、久しぶりの再会だからとよそよそしかったのは、自分だったのかもしれないと思いました。 緩やかに、けれど地道に、関わりの場で生まれていた関係性の存在に気付かせてくれたのは、 他でもない生徒ひとりひとりでした。
もっさん(インターン生)

これからしてみたいことの付箋には、バイト、クリスマスを好きな人と過ごす、勉強も頑張りたいなど、様々なやりたいことが並びました。

すこしずつ、関係性が深まっていく

最後の授業の日は、「これからやってみたいこと」を1枚の模造紙にみんなで書きながら話をしました。

以前のクレッシェンドの時「バイトがしたい。」と話していた生徒からは、「もう、週5で働いてるねん〜!」と予想もしない答えが返ってきました。

「今の気分は、緊張している。知らない人がいっぱいだから。」

1回目のクレッシェンドのとき、こんなふうに話していた彼女。クレッシェンドで会うたびに、「こういうバイトしようと思っている」「前言ってたところは、ちょっと合わへんかったからやめた。でも、別のところで面接することにしてん。」と近状をコンポーザーと話していたそうです。

 

彼女と関わったコンポーザーの『なっかん』は、

私が、彼女にとくべつ何かしたわけではないし、バイトをするきっかけを私が作ったわけでもない。
 
でも、毎週の授業で彼女と会って、一緒に過ごしたことで、彼女の生きる時間を少し共有できたような気がして。それが、よかったなあって。彼女も頑張っているし、私もがんばらなきゃって気持ちになりました。 
なっかん(コンポーザー)

と言います。

放課後も、時間いっぱい教室に残り、クレッシェンドで出た話題の続きを話す生徒とコンポーザーや、「もう会えないから!」とコンポーザーにハグする生徒もいました。

「もう終わっちゃうんだね…」という感想がコンポーザーから聞こえました。「寂しい」と伝える生徒の姿もありました。

もしかしたら、来年も会えるかな

何度も会う、同じ時間を共有する。話をする、話を聞く。いろんな方法があるけれど、誰もがすぐに「人とのつながり」ができるような最適解はありません。

このクレッシェンドのなかで生まれた、「人とのつながり」は、地道な関係の積み重ねの先に、いつの間にかあるものでした。

10回のクレッシェンドを通してできた関係性って、もはや『愛しい』ぐらいの存在。後日、寝屋川高校の文化祭に遊びに行った時、再会できてすごく嬉しかった。生徒もホントに来るとは思ってなかったみたいで、びっくりしていました。
 
ある生徒は、クレッシェンドが10月以降になかったことがすごくショックだったみたいで。別れ際に「来年も絶対、この授業を選ぶから!」と言われて。もう、その瞬間泣きそうなった。嬉しかった。いっぱい抱き合って、ばいばいした。もしかしたら来年会えるかなって、今から楽しみです。
むらちゃん(インターン生)

「もしかしたら、また会えるかな?」と思える相手がいるということは、希望だと私は思います。クレッシェンドが目指す『人とのつながり』に希望を感じてくださった方は、ぜひ寄付で応援してください。


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