D×Pタイムズ
D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
D×P×10代

ひとりひとりをちゃんと見たら、関わるの楽しいじゃん。ちょうどいい『関わり方』みつけた元高校生。

だれも私のことを知っている人がいないところにいきたい。

自分の今の状況にもやもやとするとき、そんなふうに考えることが私はあります。そのタイミングが卒業や進学などの節目に重なって新しい環境を選ぶとき、まっさらなノートを使うような緊張と高揚感がありました。いままでの自分でなく、あたらしい自分を始められるような微かな期待も。

「中学生のときに、この環境から離れたいなって。なんとなーくなんですが、漠然と思っていて。進学冊子をぺらぺらめくっていたら、『定時制高校』っていうのがあって。ここなら私を知っている人はいないだろうなって、ぽんって選びました。」

そんなふうに定時制高校を選んだ元高校生に、ふだんD×Pが活動する大阪からは離れた『札幌』で出会いました。実は、D×Pは札幌でも事業を行なっているんです。

いまは、専門学校に通うじゅなしー。22歳。初めて札幌を訪れる私に、わかりやすい待ち合わせ場所の提案や丁寧なメッセージをくれました。

高校を卒業した『じゅなしー』は、母校で行われたD×Pの授業『クレッシェンド』に、高校生と関わるボランティアで参加しました。D×Pに出会った高校生の頃や、今思うことまで、札幌の街を歩きながら聞いてみました。

クレッシェンドとは? 
通信・定時制高校で行っているD×Pの独自プログラム。高校生とD×Pのボランティア「コンポーザー」が対話する全4回の授業です。ひとりひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくります。4回の継続した授業のなかで次第に人とのつながりを得て可能性が拡がるように、音楽用語でだんだん強くという意味のクレッシェンドと名付けています。

骨折の種類と折れた時にどういうふうに筋肉が動くのか、とか。

D×Pスタッフ:じゅなしーは、専門学校でなんの勉強してるの?

じゅなしー:柔道整復師ってわかります?整骨院の先生なんですけど、その勉強をしています。たとえば、解剖学とか。人の体のなかの仕組み勉強したり、骨折の種類と折れた時にどういうふうに筋肉が動くのか、とか(笑)。

可愛らしい外見から『筋肉』や『骨』が出てくるとは…!思わずふたりして笑ってしまいました

じゅなしー:中学ではテニス部だったんですが、捻挫が多くて整骨院によく行っていたんです。施術の様子を見ていて、憧れで。

D×Pスタッフ:じゃあ、進路はすんなり決まってたのかな?

じゅなしー:すんなりでは、なかったですね〜。私は、親に「何がしたい」とかあんまり言えなかったので。やりたいなって思っても言えなくて。だから、できないだろうなって思っていたんですよね。進路自体は、卒業年次の夏休みに決めました。結構ぎりぎりでしたね。

D×Pスタッフ:どういうふうに話をしたの?

じゅなしー:「進学したいんだよね〜」…って言うのをぼそっと。はっきり面と向かってじゃなくて、親が何かしているときにですね。それまで進路については何も言われなくて、たぶん卒業したら就職するんだろうなって思ってたと思います。それで、ぎりぎりでAO入試を受けて。そのあとにクレッシェンドの授業がありました。

12月に行なったインタビューですが、暖冬のため雪がほとんどありませんでした。ふだんはどこで遊ぶの?と聞くと『札駅かな〜?』と

ちょっとグレてたんです。そのときは(笑)

D×Pスタッフ:クレッシェンドの1回目はどんな感じだったの?

じゅなしー:何にも、聞いてなくて。ふつうにホームルームの時間だと思って教室に入ったら、机もいつもの並びと違ってグループの形になっていたんです。「え、またなんか来るのか?」と、雰囲気で察しました。

D×Pスタッフ:そしたら、「大阪からきました、D×Pっていいます!」と。

じゅなしー:そう、知らない大人の人いっぱいはいってきて!最初に話した人は、大学生で、すごい緊張しいなんだって話をしてました。

D×Pスタッフ:じゅなしーも人見知りって聞いたんだけど、緊張はしなかったの?

じゅなしー:私は、人見知りなんですが、緊張はしてなかったですね。同じグループの子は仲が良くて、だから大丈夫だったんだと思うんです。私の通っていた高校は、外部の人が来てくれる機会が多くて。だから、正直、「またか〜」みたいな(笑)。社会人が来て、「いまこういう仕事してるんだよ〜」みたいな職業紹介とか、大学生が来て、「将来のことを考えよう」みたいなのがありました。

D×Pスタッフ:何をしたとかどんな話をしたとか、覚えてる?

じゅなしー:初回は、ほんとに覚えてないんです…。2回目は、また違うコンポーザーの人の話きいてぐらいですね。ほんとに申し訳ないんですが、私ぜんぜんやる気がなくて。

D×Pスタッフ:そうなんだ、どうしてやる気がなかったんだろう?

じゅなしー:…めんどくさいなって(笑)。でも、あとから、ちゃんと話聞いて自分も話すことをやっておけばよかったなと思って。貴重じゃないですか、人の辛いこととか聞く機会って。

D×Pスタッフ:どのタイミングでそういうふうに感じたの?

じゅなしー:それこそ、コンポーザー(D×Pの授業『クレッシェンド』を一緒につくる、大学生・社会人ボランティア)をやろうかなって思ったときに。自分の話をするために、いろいろ思い出したりするじゃないですか。どういうふうに話を組み立てたりするんだろう?と思った時に、私に話をしたコンポーザーが、どんなふうに話してたのかを思い出せなくて。『聞く』っていう経験をしてこなかったのは勿体なかったなって思いました。

D×Pスタッフ:じゃあ、いろんな大人が学校にきてたけど、あんまりどの話も…

じゅなしー:覚えてなかったですね…(笑)。

D×Pスタッフ:そうだよね…私も記憶にないかも。大人の話ってなかなか受け取れないこともあるよね。

じゅなしー:何かの活動をしている人だと、やっぱり一方的に聞くだけのことが多くて。クレッシェンドって生徒側からも話すことができるし、聞くこともできるから貴重な経験だったなって思います。一方的に言われても、はいそうですか、はい、はいみたいな。

D×Pスタッフ:なんか、じゅなしーがいま話している様子から想像できない…(笑)。

じゅなしー:ちょっとグレてたんです。そのときは(笑)。

このインタビューが終わるとバイトへ行くというじゅなしー。バイト先はお好み焼き屋さんなのだそうです。

「じゅなだけじゃないから大丈夫だよ。」と励まされたんです。

D×Pスタッフ:卒業したあと、どうしてコンポーザーをやってみようと思ったの?

じゅなしー:なんでだろう…?同級生の子に「クレッシェンドを今年もやるらしいから、一緒にコンポーザーをやってみない?」と言われたんです。自分が受けて、楽しかったっていうのと…私は1回目のクレッシェンドの時の印象がなくて。そのときは、なにか印象に残ることがしたいなって思ったんですよね。それまでは、自分から何かするタイプじゃなくて、いつも同じことしかしないし。誘われて、ちょっとやってみてもいいかなと思いました。まったく知らないものじゃなかったので、挑戦しやすかったのかなって思います。

D×Pスタッフ:卒業生が通っていた高校で、コンポーザーをしているところにあまり出会ったことがなくて。札幌では今回も卒業生がコンポーザーをしていて驚いたの。先生も嬉しそうだし、生徒も先輩なんですか⁉と盛り上がってて、いいなあって。

じゅなしー:私がコンポーザーをしたときは、卒業してすぐで。後輩が同じグループにいたりして楽しかったです。

D×Pスタッフ:じゅなしーは、どんな話をしたの?

じゅなしー:私は、家族とあんまりうまく接することができなくて。自分にすごく自信がないとか、家族がコンプレックスなんだって話をしました。喧嘩するわけじゃないんですが、他人とそんなに変わらないように感じていました。お互いに干渉はしないし、されないというか。

D×Pスタッフ:それで、進路の話もあんまりしなかったんだね。その話を聞いた後輩の子はどんな感じだったの?

じゅなしー:私が話しているときに、すごく頷いていたり。同じような境遇の子がいて、終わった後に「実は、私もそうなんだよ〜。じゅなだけじゃないから大丈夫だよ。」と励まされたんです。

D×Pスタッフ:それは嬉しいね。関わり方で、悩んだことはあるの?

じゅなしー:私は、話すのが苦手で。無言の時間ができちゃったんですよね。そういう時は、どうしたらいいんだろう?って迷いました。どこまで聞いていいのかもわからないし、あんまり自分のことを言い過ぎても相手は引いちゃうのかな?と思ったりとか。

D×Pスタッフ:難しいよね。私は、それが普通のコミュニケーションなのかなとも思ってて。お互いに「はじめまして」だし、どこまで話していいかな?って考えながら話すのも、さっき言ってた一方通行じゃない関わり方なんだろうな…と思っています。

だれも私のことを知っている人がいないところにいきたかった

D×Pスタッフ:そう言えば、どうして定時制高校を選んだの?

じゅなしー:だれも私のことを知っている人が、いないところに行きたかったんですよ。友達と何かがあったわけではないんですけど、中学生のときに「この環境から離れたいな」と。なんとなーくなんですが、漠然と思ってて。進路をそろそろ絞りなさいって言われて、進学雑誌をぺらぺらめくっていたら、定時制っていうのがあって。ここなら、私を知っている人もいないだろうなって、ぽんって選びました。同じ中学から進学した人は、もしかしたらいたかもしれないんですが、午前午後夜間とある学校で午後部にはいませんでしたね。

D×Pスタッフ:じゃあ、狙い通り…

じゅなしー:そうですね、狙い通り(笑)。

D×Pスタッフ:高校では、部活してたの?

じゅなしー:部活はあるんですけど、私は入ってなくて。基本は午後から登校して授業なんですが、午前中はバイトしてたときもあるし、授業いれてたときもありました。

D×Pスタッフ:いまは飲食店で働いているんだっけ?その時のバイトも接客だったの?

じゅなしー:接客ですね、好きなんですよ。例えば、クラスの子だと最初に一緒になったら1年間は確実にずっと一緒にいなきゃいけない。長く付き合う相手にこれ言ったら嫌われちゃうかなとか、これ聞いたらまずいかな?と考えるのが苦手なんです。接客ってその場限りだから。学校だと、なんかこじれたらずっとそのままかもしれなじゃないですか、それが怖くて怖くて。

D×Pスタッフ:その感覚すごくわかる。最初は新しい出会いにわくわくするんだけど、バイトでも1年ぐらい経つとだんだん怖くなってきて。

じゅなしー:めっちゃわかります!高校は楽しかったんですが、学生らしいことはできなかったので、それは後悔しています。放課後みんなで遊びに行くとか、休み時間みんなで集まってわいわいするとか。専門学校に進学してから思ったのが、みんなでお昼ご飯を食べたかったな、って。授業が始めるのがお昼からだから、食べてから登校するんですよね。だから、みんなでお昼ご飯を食べる機会がなくて。放課後も、みんな時間割りがばらばらなので、なかなかいけなかったですね。

自分の好みの人としか関わらなかったけど、ひとりひとりをちゃんと見るようにしたんです。

D×Pスタッフ:今の学校はどんな感じなの?

じゅなしー:楽しいです。人との付き合いかたを変えたというか。今までは、自分が好きな人としか付き合わなかったり、自分の好みの人としか関わらなかったんです。専門学校は、いろんな人が集まるじゃないですか、そのひとりひとりをちゃんと見るようにしたんです。この人の性格は苦手だけど、こういうところは尊敬できるなというのを探すようにしたら、関わるの楽しいじゃんって。今は、わりと人と関わるのが好きです。なので、学校が楽しいです。

D×Pスタッフ:もうすぐ卒業なんだよね。

じゅなしー:そうなんです。でも、就職するかどうかも悩んでて。業界のことをいろいろ知ると、なかなか厳しい世界だなって。整骨院はだいたい日曜日が休みなんですが、休みも勉強会があったり、月給もめちゃくちゃ低かったり。だけど、かなりの肉体労働だって聞いたりとか。就職して何十年も続けていけるかな?と思ったら、ここじゃなくてもいいのかな…と迷っています。

D×Pスタッフ:そうなんだね、働き方も大事だよね。じゅなしーは、こんなふうに生きていきたいとかっていうのはある?ありたい人像というか。

じゅなしー:自分から、人に関われるようになりたい。そういう職業にも、本当は就きたいなあと。どういう職業があるのかはわからないけど、極力人と関わる職業につきたいです。気楽に世間話をして、じゃあまたね〜みたいな。重い話をするのもいいんですが、常に深く深く関わるんじゃなくて。広く浅く、いろんな人に関わりたいなと思っています。


クラスの子だと最初に一緒になったら、1年間は確実にずっと一緒にいなきゃいけない。嫌われないようにと、関わりを考えることが苦手だった。そんなふうに感じていた彼女は、いま、ちょうどいい『人との関わり方』を見つけたようです。

「だれも私のことを知っている人がいないところにいきたい。」というのは、人としっかり向き合ってきたからこそ、の言葉だったのかもしれません。じゅなしーの話をきいて、過去の私も認めることができるようでした。

大阪から離れた場所でも、プログラムが実現できるのは、D×Pの大切にする姿勢に共感し一緒に体現しようとしてくださるボランティア「コンポーザー」が地域にいるから。じっくりと話をした大人が、自分の身近にいるというのはとても素敵なことだと思います。

D×Pは、大阪を中心に、兵庫、和歌山、岡山、そして札幌で。人とつながる授業『クレッシェンド』を、定時制高校や通信制高校に届けています。2019年は、関東へ活動を広げ、たくさんの高校生と出会いたいと考えています。これらの事業は全て、D×Pに共感してくださる方の寄付で運営しているんです。

よかったら、あなたも。ぜひ、D×Pのサポーターとして寄付で応援してください。

あなたも「寄付」を通じて、この取り組みに参加しませんか?

D×P(ディーピー)は、10代の孤立を防ぐNPOです。

「10代の孤立」は、不登校・中退・家庭内不和・経済的困難・いじめ・虐待・進路未定・無業などによって、
いくつかの安心できる場や所属先を失ったときに起こります。

D×Pは、スタッフやボランティアの大人が定時制高校へ行き、授業や校内居場所事業で高校生ひとりひとりと「つながり」をつくっています。そして、高校生の好きなことや興味などをきっかけに仕事体験を企画し、進路を考えるきっかけやまだ見ぬ世界と出会う機会をつくっています。

そして、これらの取り組みは全て、D×Pに共感してくださる方の寄付で運営しているんです。よかったら、あなたも「寄付」を通じて、この取り組みに参加しませんか?


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