「女の子として生きたい。」ー名前を変えて、女の子として高校に通う高校生インタビュー
D×Pと泉大津市(大阪府)が一緒に取り組みを行っている、地域のなかにある居場所事業「いごこちかふぇ」(2018年度終了)。さまざまなしんどさを抱えた中高生が訪れる安心できる居場所でありながら、これからのことをゆっくりと一緒に考えていく場です。
中学3年生のとき、「いごこちかふぇ」に訪れ、高校へ進学することを決めた女の子がいます。彼女は、自分の体の性別と心の性別に違和感を持つトランスジェンダー。戸籍上の性別は、「男の子」であることに生きづらさを感じ、中学校にはあまり通えていなかったそうです。
いごこちかふぇで、これからの話が出たとき「高校は行ってみたい。」という彼女の本音が伺えました。
高校に行くまでのこと、今考えていること、これからのことを訊いてみました。
「しょーもな、その悩み」とか思われたらどうしようと思って。
D×Pスタッフ:いごこちかふぇに行ってみてどうだった?
はるさん(仮名):最初は、怖い人とかおったらどうしよ〜とか思って。相談にも乗ってくれるって聞いてたけど、「しょーもな、その悩み」とか思われたらどうしようとか思って。いざ行ってみたら、みんなめっちゃいい人で、真剣に私の話も聞いてくれました。それで、いごこちかふぇに行く日が楽しみになって。
いごこちかふぇに行く前は、友達としか遊ばんかったし学校も嫌やったんですよね。朝起きるのも苦手で、やったらあかんことしてたんです。中学生やのに(笑)。
普通の大人って否定するじゃないですか。「そんなんやったらあかんやろ」とか。でも、のりさん(代表の今井)は否定せずに「それは、ほんまにしたいんか?」って聞いてくれました。「いや、したくないけど…」って答えたら「それなら、自分らしく生きたらいいんじゃない?」って。
高校へ行くとしたら。名前を変えたいし、女の子として生きたい。
D×Pスタッフ:その時は中学校3年生だったんだよね、進路の話とかもしたの?
はるさん:高校の話もしましたね。中学校のときは学校に行っていなかったから、高校に行ける確率がめちゃめちゃ低くて。朝起きるのもめっちゃ苦手で。それも、のりさんに相談してました。
それに、自分の(戸籍上の)性別と自分のなかでの性別が違って。高校に行くとしたら名前を変えたいし、女の子として生きたいっていうのがあって。でも、それはやっぱり難しいことなんですよね。
D×Pスタッフ:高校に行く前にも、いろいろ心配なことがあったんだね。
はるさん:そしたら、通信制高校や定時制高校を教えてくれて。「こんな、高校があるから行ってみない?」って。行ってみたいけど、私には無理やろって思ってたんですけど…。のりさんに「できる。なんでそうやってすぐに諦めるん?」って言われました。
そのあとも何度も「できるよ」って言ってくれて。名前のほうも俺がなんとかしてあげるからって言われて。「じゃあ、わかった。そこまで言うんやったら、頑張ってみよう。」と思いました。
高校には絶対に入られへんやろうなと思ったけど、いざ受験してみたら受かって。のりさんに「ありがとう、受かった!」って言ったら、入学式にも来てくれました(笑)。
D×Pスタッフ:のりさんお父さんみたい!(笑)高校はどんな感じやったん?
はるさん:最初は、不安でしたね。女の子として高校には通っていたので、秘密がバレてしまったらどうしようって。でも、案外バレへんくて(笑)。逆に友達もいっぱいできたし。
高校に行かなかったら、今の人生がなくて、今の友達がおらんのやろうなって思うと「ああ〜高校行ってよかったな」と思いました。視界がいままでの倍ぐらいに広がりましたね。
のりさんはめっちゃ頼りがいある!あ〜大人やなって感じ。
D×Pスタッフ:のりさんってどんな人?
はるさん:のりさんは、めっちゃ頼りがいある!喋ってて為になる。
D×Pスタッフ:のりさんにどんなこと相談したりした?
はるさん:のりさんに〜…全てです。恋愛相談も学校も家庭のことも。全部相談して、毎回いい答えが返ってきます。
D×Pスタッフ: すごい。強力なアドバイザー!
のりさん(D×P理事長 今井):今何喋ってんの?
D×Pスタッフ: のりさんに相談したっていう話を聞いてました。のりさんは頼れる人やって!
はるさん:のりさんはロリコンやって話を(笑)
のりさん(D×P理事長 今井):ロリコンってうちの奥さんのことしか見てないやろ。(※今井の奥さんは年下。)でも、恋愛遍歴だいたい全部知ってるもんな(笑)。
D×Pスタッフ:そんなに?!(笑)
のりさん(D×P理事長 今井):ロリコンってうちの奥さんのことしか見てないやろ。(※今井の奥さんは年下。)でも、恋愛遍歴だいたい全部知ってるもんな(笑)。だいぶ喋ったよ。長い付き合いだからね。このあいだも、トランスジェンダーの子の集まりに一緒に行ったんだけど、だいたいが大卒だったよな。
D×Pスタッフ:高校生いなかったの?
はるさん:全くいなかったです。社会人とか、大学通ってるとか。
のりさん(D×P理事長 今井):高校生年代のLGBTの子たちって、誰にも言えないケースが多いんじゃないかな。相談機関や支援の場も、もともと少ないしリーチもしづらい。高校へつなげられてよかったよ。あのままだったら、学校に通ってなかったかも知れないな。
はるさん:うん。通ってない。行くわけないやん。
のりさん(D×P理事長 今井):それが今や皆勤賞やもんなあ!
はるさん:女の子の名前で行けたからこそ、行ってるだけ。そのまま男の子の名前で行くんやったら、行かへんよ。
ネイリストやったら、別に性別は関係ないし。それに、実力社会なんで。
D×Pスタッフ:じゃあこれからのこととかも相談してるの?
はるさん:今、相談してます。就職だったら、大卒なら就職試験を受けられるところは多いんです。でも、高卒で今の状況(トランスジェンダー)でいけるところは少ないんですよね。それやったら、就職に拘らずに、興味のあるネイリストや美容師の資格をとってみて自立するのはどう?とアドバイスをもらいました。
男の子から女の子になった高校生を採用したって会社がないんですよ。だから、難しいんですよね。一人暮らししたり、自分で生きていくためにも最低こんくらいのお金がいるっていうのを聞いたら、アルバイトでは難しいなって思いました。
D×Pスタッフ:企業にとっても、まだまだ事例が少ないんだね。
はるさん:自分でもネイルをしているから、ネイリストには憧れます。ネイリストって、一級、二級ってあって難しいんです。二級でも十分うまいと思うんですけど、私はやっぱ一番上がいいんで。
D×Pスタッフ:上昇志向なんだね!
はるさん:かっこよく見えるじゃないですか。「ネイルうまいな」って言われたら、「当たり前やん。一級やもん!」って返せる(笑)。
それに、一級やったらどこの企業でも勤められるし。メンズネイリストとかもいてるから、別に性別は関係ないし。技術職だから実力でどんどん上にいける。それやったら、ネイリストになるのもありかな〜って。
D×Pスタッフ:美容に興味をもったきっかけはある?
はるさん:かっこよく見えるじゃないですか。「ネイルうまいな」って言われたら、「当たり前やん。一級やもん!」って返せる(笑)。髪の毛を触ることがめっちゃ好きで、友達にセットしてあげたりしていたんです。美容師になることを目指して、高校にも入ったんですよ。
でも、いざ美容師を目指していく上で「なんか、違うなあ」って思って。ほんまに自分は髪の毛を触ることが好きなんかとか。初任給15万くらいしかないって聞いて、そのなかでハサミ買わなあかんのか〜って。いやあ〜…やっていけるかなって思いました。
しかも、美容師だとネイルができへんって気づいた時に「あ、あかんやん。美容師なるのや〜めた!」って。こんな軽い気持ちで美容師なったらあかんと思いました。美容師を諦めたとき、特に夢もなくて。何を目指して学校に行ってるんやろうと思ったりもしたんです。でも、やっぱり美容系が好きで。とにかく、人を可愛くするのが好き。自分も可愛くなったら嬉しいし、「ありがとう」って言われたら嬉しいから。
D×Pスタッフ:ネイルに興味持ったのはいつから?
はるさん:中3ですね、友達がしてて。お店でやらなあかんって思ってたら、友達が「自分でやってるんだよ」って教えてくれました。そしたら、ノリがいる、ジェルがいる、材料がいる…。(笑)
D×Pスタッフ:そんな本格的なのやってたんや!
はるさん:自分でマニキュアやろうとしたら、最初やっぱガタガタでした。左手は塗れるけど、右手はうまくできない。そのうち左手が震えるんやったら、左手を固定して右手を動かせば綺麗に塗れるやんって気づきました。『美意識は爪から』『髪の毛は清潔感』っていうし、まずはネイルや髪の毛に興味を持ちましたね。
だから、美容に関してはちょっとうるさい。髪の毛は、持続的に染めに行かないと汚く見えるから、黒い地毛がみえている友達には「染めや!」って言いたくなる(笑)。
D×Pスタッフ:その意識の高さは、どこからきてるん?
はるさん:やっぱり、私って元々は男の子じゃないですか。どれだけ努力しても女の子には勝てないんですよ。女の子は、私が持ってないものを持ってるから、生まれたときから。
だから私にとっては、女の子が不細工であれ、デブであれ、可愛くなくても。全員目標で、憧れなんですよね。高嶺の花。自分が、どんだけ手術してお金かけて、綺麗にして。そっくりにはできる。でも、子供産めって言われたら無理やし。届かないんですよ、全然。
だから、せめて。女の子より外見を綺麗にしようと思います。女の子が努力しているなら、もっと何十倍も努力してもっと可愛くなろうって。じゃないと、勝てるとこがないですもん。そっから美意識を磨くようになりました。
女の子には強く生きて欲しい。だって、女の子がいるから、男の子もいるし、人間がおる。
D×Pスタッフ:女の子への強い憧れが美意識の高さにつながっているんだね。
はるさん:そうですね。なんか、女の子が弱音吐いてるとこは、もう大嫌い。「どうせ、私デブやし。認めてもらわれへん。」そうやって、自分を全部否定する子がいるんですよね。そんなん痩せたらいい!なんとかなることをなんですぐ諦めようとするの?って思います。
私は、女の子なりたいのになられへんよ。それでも諦めてないよって。あんたがそこで諦めとったら、私はどうなんの。私は生まれた時点で諦めとけばよかったかなって。でも、頑張って諦めないようにしてるやろうって。
女の子は、素晴らしい生き物やねん。だって、女の子がいるから、男の子もいるし、人間がおる。女の子は子どもを産むことができる。次の世代をつくることができる。そんだけ素晴らしい生き物やのになんでそうやって諦めんの?お母さんに痛い思いして産んでもらったのに、なんでそんな自分の人生を棒に振るようなことすんの?って。
でも…そうは言っても、その人になってみないとわからへん。仕事も、人間性もそう。だけど、他の人にできて自分にできひんことなんて絶対にないと思ってる。
D×Pスタッフ:すごい、なんか元気をもらった。強く生きようって。 これからはどんなふうにして生きていきたい?どんな大人になりたい?
はるさん:どんな大人になりたいんやろう〜。えっと、みんなに認められるような大人になりたい。やっぱり、なんていうの自分が“こう”やから、最初からできないと思われたくない。
だけど、あの子ができたんやったら、「私もできる!」って思ってもらえるような人間になりたい。誰にも認められるような大人になりたい。
D×Pスタッフ:このあと、ネイリストさんにお話を聞くんだよね。じゃあ、それの第一歩になるのかな?
はるさん:そうですそうです。ほんまにそう。
D×Pスタッフ:頑張ってください。
はるさん:本当に頑張ります。ありがとうございます。
インタビュー:下西夏帆(当時D×P広報インターン)