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「ありのままの自分を見せることで、高校生も心を開いてくれた」コンポーザーインタビュー:赤松徳之さん

通信制・定時制高校の高校生に人とのつながりをつくる授業(クレッシェンド)を届けているD×P(ディーピー)。授業のなかで高校生と対話するボランティアがコンポーザーです。不登校経験がある方、いろんな仕事を経験している方、家庭がしんどかった方、世界一周した方、ずっと悩みながら生きているという方など、職業も経験も背景も様々な方が参加してくださっています。

コンポーザーとは? 
20歳~45歳の経験も背景もバラバラな大人たち。高校生に何かを教える立場ではなく、否定せず関わることを大切にしています。compose(コンポーズ)は、『構成する』という意味をもつ言葉です。コンポーザーとは、D×Pの取り組みに参加し、プログラムを一緒につくるメンバーという意味を込めています。

今回は、2014年5月〜7月に行われたクレッシェンドに参加してくださった、大阪経済大学の3年生の赤松徳之さんにお話を聞きました。

こんな僕が高校の先生になったら、しんどいと思っている人の支えになったり、いろんなアドバイスができるんじゃないかなと思ったんです。

D×Pスタッフ:とっても雰囲気の良いクラスでしたよね ! とにかく温かい雰囲気で。赤松くんもそうですが、コンポーザーさんが個性的な人の集まりで、わたしもとても楽しかったです。最初に、「なぜ、コンポーザーになろうと思ったのか?」教えていただけますか? 

赤松さん:正直言うと、「教員採用試験に向けて何か行動したい」というのがずっと頭の中にあって。教員採用試験を突破するためには、「人と何か違うことをやっておかないと」と思ったんです。去年(大学2年生)までは、大学の近くの中学校の生徒に勉強を教える、ということくらいしかやっていなくて。3年生になったら、何か新しいことをはじめてみたい、と考えていました。その中で、ネットでいろいろ検索していたらD×Pのホームページを見つけて、「これは面白そうだぞ」と思ったのがきっかけです。

D×Pスタッフ:とっても雰囲気の良いクラスでしたよね ! とにかく温かい雰囲気で。赤松くんもそうですが、コンポーザーさんが個性的な人の集まりで、わたしもとても楽しかったです。最初に、「なぜ、コンポーザーになろうと思ったのか?」教えていただけますか? 将来は、教師を目指されているとのことですが、教師を目指すようになったきっかけを、教えてもらえますか?

赤松さん:まず、昔から人に何かを教えることがすごく好きで、中学校の時は勉強が苦手な友達によく教えていました。あとは、中学校の時に担任だった先生の影響です。なので、中3の時からずっと高校の教師を目指しています。

D×Pスタッフ:中学の先生の影響で教師を目指しているのに、高校の先生になりたいのには、何か理由があるんですか?

赤松さん:そうなんですよ(笑)
何でかっていうと、高校は一番楽しくなかったんです。受験受験受験…で。しかも、受験勉強ばかりさせられていたのに、受験には成功しなかった。毎日とてもしんどかったです。でも、当時の自分は言われるがまま、受験勉強をこなすことしかできなかったんです。

もちろん僕のほかにも、しんどそうにしている人はたくさんいて。こんな僕が高校の先生になったら、しんどいと思っている人の支えになったり、いろんなアドバイスができるんじゃないかなと思ったんです。でも、今バイトで塾講師をしているんですけど、中学生と関わっていると「中学の先生も良いな…」と思ったりもして、揺れ動いています(笑)

それまで友達に「人の目が輝く瞬間」の話をされても、いまいちピンと来なかったんですけど、ユメブレで体感できて、とても感動しました。

D×Pスタッフ:クレッシェンドでは、同じ生徒に対して3ヶ月間にわたり全4回の授業を実施するので、赤松くんも4回の授業をコンポーザーとして経験してくれたかと思うのですが、特に印象に残っているプログラムは何ですか?

赤松さん:それはもう…3回目の授業で実施した「ユメブレスト」です。「みんなの目が輝いている」っていうのを感じた瞬間でした。それまで友達に「人の目が輝く瞬間」の話をされても、いまいちピンと来なかったんですけど、ユメブレで体感できて、とても感動しました。

ユメブレとは、それぞれの「ユメ」をクレヨンで画用紙に描き、発表するワーク。 D×Pでは「ユメ」の定義を 「ちょっと好きなこと、やってみたいことも、全部ユメである」としている。「将来こんな仕事がしたい ! 」といった大きな目標から、「こんなところに行ってみたい」というようなやりたいこともどれも「ユメ」です。

「自分の思っていることを、人前で言えた ! 」っていう経験が、高校生の自信になったんだなぁ、と痛感しました。1回目2回目の授業で、信頼関係を構築してきたからこそ、3回目の授業でああやってみんなの目が輝くんだなぁと思いました。

D×Pスタッフ:最後の授業(4回目)は、どうでしたか?

赤松さん:4回目はメッセージカードを交換したんですけど、最初はあまり良い印象はありませんでした。きっと、当たり障りのないことを書き合うんやろな…と。でも、いざ高校生や他のコンポーザーからもらったものを見ると、本当に嬉しくて。内容も、本当に僕のことをよく知ってくれた上で書いてくれていて。あまり話さなかった高校生も、僕の話に興味がなさそうに見えた高校生も、「心ではちゃんと聞いてくれていたんだ」とわかりました。あのカードは僕の宝物として、ずっと筆箱の中に入っています。

D×Pの基本3姿勢とは「否定しない 」「年上/年下から学ぶ 」「様々なバックグラウンドから学ぶ」の3つ(2016年3月当時)
2019年度より、これまで大切にしてきた姿勢を受け継ぎながら「否定せず関わる」「ひとりひとりと向き合い、学ぶ」の2つにアップデートされています。

「高校生のためにこういう態度でいよう」とか、考えなくていいんだって思いました。僕が自分を見せることで、高校生も少しずつ、心を開いてくれたような気がします。

D×Pスタッフ:逆に、「このプログラムは大変だったぞ」というのはありますか? 

赤松さん:うーん、特に1、2回目のプログラムに共通していることなんですけど、「コミュニケーション」ですかね。最初はもちろん高校生も、知らない大人たちに対して緊張しているし、今回初めてクレッシェンドに参加したこともあって、この場に馴染めるのか僕自身も不安で…。高校生と一緒になって盛り上がれる「共通の話題」がなかなか見つからなくて焦ったこともありました。特に女の子との会話は…最初は難しかったです。おっかなびっくり話しかけてて、高校生がこわばっているのもわかって、「もうどうしよう…」って感じでした。

D×Pスタッフ:でも赤松くん、どんどんはじけていきましたよね?(笑)それは何かきっかけがあったんですか?

赤松さん:なんだろう…最初は、「自分が高校生に合わせに行く」っていうスタンスだったんです。あまり自分を出さずに、高校生にとにかく合わせようとしていて。でも、3回目は朝、高校生が来る前の話し合い(コンポーザーとスタッフの打ち合わせ)が終わったあと、服の話で盛り上がって、気がついたら自分からどんどん喋っていました。そのうち高校生も教室に入って来て、大人たちも高校生も一緒になって喋りはじめて…。

あの空気が、すごい良かったんです。無理にどっちかがどっちかに合わせようとするんじゃなくて、自然に喋っているというか。「あ、高校生のためにこういう態度でいよう」とか、考えなくていいんだって思いました。僕が自分を見せることで、高校生も少しずつ心を開いてくれたような気がします。

1回目のプログラムが1番大変でした。会ったことのない高校生を想像して話の内容を考えるっていうのは、本当、難しかったです。

D×Pスタッフ:1回目と2回目のブログラムでは、コンポーザーさんに、高校生に向けて「失敗体験談」と「今の生活についてや進路のこと」を話していただいてますが、コンポーザーさんからは、そのお話の内容を考えるのが大変 ! との嘆きの声を、たびたびお聞きします。赤松くんにとっては、どうでしたか?

東さん:あれですか…(苦笑)あ、でもすごい勉強になりました(笑)

高校生の前で話すことはとても楽しかったです。ただ、聞いている側(高校生)からすると、その話に興味がある人は楽しいかもしれないけど、興味がない人にとっては全く楽しくない時間なわけで。話をしていて、興味がなさそうな顔をされるのってやっぱちょっと辛かったですけど、「じゃあ、この子はどんなことに興味を持つんだろう?」って考えるきっかけになりました。

これは高校生から教えてもらったことですね。自分が話したいことを話すだけじゃなくって、相手のことも考える。1回目のプログラムは、はじめて出会った高校生に話をするわけだけど、2回目は違う。大体どんな子がいて、どんなことに興味があって興味がないのか、何となく分かってくるので、僕も話の内容を最初考えていたものと変えたりしました。

D×Pスタッフ:何か、高校生とうまくコミュニケーションが取れるように、工夫したことってありますか?

赤松さん:そうですね、僕は写真をたくさん用意しました。やっぱり、話を聞いたり、パソコンの画面で文字を見せるだけだと、飽きてしまう子って多いと思ったんです。僕の経験上、つまんない授業でも、難しそうな授業でも、ビデオとか視覚教材が入ると、結構やる気になったりしたので、写真でイメージを持ってもらうのは良いんじゃないかなぁと思って。こういう感じで、2回目以降のプログラムではいろいろ工夫が出来るけど、1回目のプログラムが1番大変でした。会ったことのない高校生を想像して話の内容を考えるっていうのは、本当、難しかったです。

コンポーザーも人間ですから、それぞれがそれぞれの良さを活かして関わっていけたらそれで良いんだな、と思いました。 

D×Pスタッフ:大阪午前クラスには、コンポーザーさんが赤松くん含めて5人いらっしゃいましたが、他のコンポーザーさんとはどんな感じで関わっていましたか?

赤松さん:いやー濃いメンツですね(笑)大阪午前クラスで一緒に授業をした4人とは今でも仲が良くて、授業が終わった今でも飲みに行ったりしています。

クレッシェンドの時は、最後のミーティング(その日のプログラムのことをスタッフとコンポーザーで振り返る時間)で、いつも僕が授業中に気がつかなかったことを話している人がたくさんいて驚きました。なるべくいろんな生徒と接しようと思っても、やっぱり相性とかもあるし、自分1人では1回の授業で話せる子たちっていうのは限られてくるんですよ。偏りが絶対ある。その中で、その日自分が「あんまり話せなかったな」って思う高校生の話を、他のコンポーザーがミーティングの時にシェアしてくれて、とても参考になりました。次の授業であの子と話すことがあれば、こんなこと話そうかな、と考えられるようになりますし。

とりあえず、4人みんな好きですね(笑)ぐいぐい生徒の心に入っていける人がいたり、外側から温かく見守る人がいたり、全員が全員違うキャラで良かったです。いい感じでバランスが取れてました。中には「この人がいれば、空気がぱっと明るくなる」みたいな感じのコンポーザーがいて、どうしたらああなれるんだろう…と思っていました。でも最終的には、僕は僕なりの関わり方ができていたし、コンポーザーも人間ですから、それぞれがそれぞれの良さを活かして関わっていけたらそれで良いんだな、と思いました。

「みんなの目が輝く瞬間」に立ち会った時、なんか申し訳ないなって思いました(笑)「自分が語りたい」とか思っててすいませんって感じです。 

D×Pスタッフ:クレッシェンドに参加する前と参加した後で、クレッシェンドに対する印象って、何か変わりましたか

赤松さん:そうですね…とにかく最初は「楽しそう」としか思っていませんでした。D×Pのホームページもなんかポップな感じでしたし。あと、「自分がいろんなことを語れる場、高校生に教えてあげる場」だと思っていました。通信制高校に通う高校生と関わったことがなかったから、どんな高校生なのかちょっと不安だったというのもありますが…。でも、とにかく楽しみでした。

いざ始まってみると、2回目の授業までは、実はあんまり面白くなかったんですよ(笑)思っていたのと違う感じで。今まで関わってきた高校生よりも、僕の参加したクラスの高校生はすごい静かで、僕の思っていることをガンガン話せる感じじゃなかったんです。「自分が語る場」だと思ってましたから、「なんか違うな」という違和感をしばらく感じていました。

でも、3回目の授業のユメブレストで、「みんなの目が輝く瞬間」に立ち会った時、なんか申し訳ないなって思いました。「自分が語りたい」とか思っててすいませんって感じです。自分がしてあげられることなんて本当に何もなくて。僕や他のコンポーザーが自分を出したことで、みんな(高校生)がちょっとずつ僕のことを信頼してくれる。その結果、目を輝かせて、今度はみんなが自分のことを教えてくれたっていう、この経験が、僕にとって本当に衝撃的でした。

今思うクレッシェンドは…「僕が高校生のことを成長させる」んじゃなくて、「僕が成長させられる場」でしたね。完全に…。

与えられるものが本当に多かったんですよ。今まで憧れの先生はいたけれど、明確に「自分はこんな教師になりたい」っていうのはあんまりなかったんです。でも、クレッシェンドを通して「人の目を輝かせることができる教師になりたい」って思いました。

見た目で決めつけちゃだめですね、本当に。申し訳なかったです。

D×Pスタッフ:印象に残っている高校生っていますか?

赤松さん:ある女の子なんですけど。はじめは「この子、全然誰の話も聞いていないんじゃないか」って思ったんです。特に、僕に対してすごく緊張してたみたいで、話しかけても返事がなかったり。「嫌われてるんかな」って思っていました。

でも、ユメブレのあと、僕が発表したユメについて、1人で質問に来てくれたんです。びっくりしました。自分の話はするけど、人の話には興味がない子だと勝手に思っていたので…。だから、僕の話を聞いてくれていたっていうのが分かった瞬間、本当申し訳なくなりました。多分、ずっと僕の話を聞いてくれていたんですよ。でも、どうやって「聞いてるよ」っていうのを、表現したら良いのかがわからなかったから、僕には聞いていないように見えてしまっただけなのかもしれないって思いました。

見た目で決めつけちゃだめですね、本当に。申し訳なかったです。

あと、はじめはずっとしんどそうにしていた男の子が、最後はすごく楽しそうに自分の話をしてくれたりとか。もう全員ですね。全員印象に残ってます(笑)

D×Pスタッフ:ぶっちゃけ…。もう1回コンポーザーやりたいと思いますか?

赤松さん:もちろん ! いや、本気ですよ(笑)
クラスが違えばメンバーが違うわけですから、またいろんなことに気づけると思うとワクワクします。次参加するなら、もっと早くから自分を出したいです。

将来「通信制」の高校で働きたいと思っていない人にも、すすめたいです。全日制にだって、いろんなバックグラウンドを持っている子はいるわけで。

D×Pスタッフ:最後に…どんな人に、コンポーザーをすすめたいですか? 

赤松さん:僕はやっぱり、教員を目指している後輩にすすめたいですね。将来「通信制」の高校で働きたいと思っていない人にも、すすめたいです。全日制にだって、いろんなバックグラウンドを持っている子はいるわけで。いろんな過去をもっている子に対して、どう接していったらいいのか、この機会を通して考えてほしいですね。

あと、他のコンポーザーから学ぶことがたくさんあるのが、良いところだと思います。普段大学生やってたら、いろんな職業の社会人と関わることなんてそんなにないじゃないですか。知らないことをたくさん教えてもらえるし、そういう意味でも大学生におすすめしたいです。


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