D×Pタイムズ
D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
D×P×スタッフ

この人だけはずっとそばにいてくれるなって人が、一人いれば。

認定NPO法人D×P(ディーピー)が、通信・定時制高校で行っている「クレッシェンド」などのプログラムの企画・運営にスタッフと一緒に携わるのが、D×Pのインターン生です。

「女子会」という授業後も高校生とオトナが関わることができる場を企画・提案し、インターンを卒業してネイリストとして活動している今も、月に一度の女子会を運営してくれています。

2015年1月から2016年3月まで、D×Pのインターンとして活動した熊沢あずささん(愛称:ずーちゃん)に話を聞きました。

クレッシェンドとは? 
通信・定時制高校で行っているD×Pの独自プログラム。高校生とD×Pのボランティア「コンポーザー」が対話する全4回の授業です。ひとりひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくります。4回の継続した授業のなかで次第に人とのつながりを得て可能性が拡がるように、音楽用語でだんだん強くという意味のクレッシェンドと名付けています

アメリカで過ごした中学時代と、不登校。

D×Pスタッフ:D×Pを知ったきっかけは?

ずーちゃん:大学入学してすぐ、1回生の交流のための合宿があって、その時に講演できていたのりさん(D×P理事長 今井紀明)の話を聞いて知りました。「こんなことをしてる人もいるんだ」って思った。私も誰かのために自分の経験を役立てたいと思っていたから、D×Pで私のやりたいことができるかもしれないって思ってた。大学3回生のときに授業も落ち着いてきたから、なにか新しいこと始めようと思って、すぐにたっちゃん(当時の事業部長 川上竜典)に連絡しました。

D×Pスタッフ:誰かのために役立てたい、ずーちゃんの経験というのは?

ずーちゃん:大きな経験が2つあって。一つ目は小学校を卒業してすぐに父の転勤でアメリカで4年間過ごしたこと。言葉も話せなくて、友達もいなかった。1つ下の弟がいるんだけど、お互いに思春期で、2人とも学校でうまくいかないから、家でもみんなずっとピリピリしてて。それがすごく辛かった。私はずっと日本で、普通の中学生になりたかった。だから高校1年のときに「普通の日本の女子高生になりたい!」って両親に頼み込んだの。制服着てクレープを食べるっていう、「ザ・女子高生」みたいなことがしたかったから。それで一人で帰国して、名古屋の公立高校に入学した。 

二つ目は、高3のとき。夢見てた女子高生になれたのはいいんだけど、3年生になるとみんなが受験モードに入って、私はなんとなくそれについていけなかった。高校卒業したらすぐにでも誰かの役に立ちたいって思ってて、大学進学のイメージが湧かなかったから。その時期から、学校の教室がすごく怖くなった…。へらへらして、勉強もしない私が入っちゃいけない場所みたいに思えて、いつの間にか学校に行けなくなった。 この2つの経験を、負の経験として終わらせたくなかった。そして私は、教育現場でつまづいたから、教育に携わることをしようと思って。不登校の私をなんとか卒業させようと、私一人のために日替わりで補講を開いてくれた高校の先生たちへの恩返しの意味も込めてね。 

D×Pの授業の現場で見られるのは、本当に小さい、ささやかな変化

ずーちゃん:私がD×Pに連絡した時は、もうインターンは募集していなくて。でもコンポーザー(ボランティア)として関わることはできるみたいだったから、とりあえずやってみようと思って。

D×Pスタッフ:コンポーザーやってみてどうだった?

ずーちゃん:もちろん楽しかったし、こういうことをD×Pではやっていけるんやなって思った。D×Pの取り組みは目に見えて高校生を変えるわけじゃないっていうのも、コンポーザーをやってみて、わかった。当初私は「自分の経験を話して、高校生が劇的に変わる」っていう理想を抱いてたんだけど、そんなことはなかった。「現場で関わっていくって、こういうことなんだ」って気づけた。授業の現場で見られるのは本当に小さい、ささやかな変化で、もしかしたら変化もないくらいの程度だけど、それでもD×Pは高校生に関わり続けてるんだってわかった。 あと、スタッフの人たちの面白さにハマった(笑)コンポーザーとして関わるのもいいけど、インターンとしてこの人たちと一緒に何か取り組んでいきたいって気持ちが強まったかな。

D×Pスタッフ:D×Pのインターン面談ってどんな雰囲気だった?

ずーちゃん:インターン面談の時は、しっかり中身を見られた感じがした。面談の日、金髪にいつもどおりの服装で行ったんだけど、やっぱり怒られるんじゃないかって不安は少しあって。でも、スタッフのみんなも、外見はどうでもよくて、中をしっかり見てくれてる感じがした。

D×Pスタッフ:ずーちゃんって、見た目と違って意外と繊細な部分があると思うんだけど、その金髪やファッションにはどういう意味があるの?

ずーちゃん:これは、私にとっての「理想」。私、結構ネガティブだし、引きこもったりもするけど、そうじゃない自分でありたい。ずっとキラキラしたい、この見た目通りの悩みなさそうな人に本当はなりたいの。外から「こう見られたい」じゃなくて、私が「こうありたい」。だから、このメイクも金髪も、ヒールもネイルも、この外見は私にとっての理想なの。 あとは単純にこのファッションが好きだから。今はもう、こういうファッションは流行ってないけどね(笑)

不安定な高校生たちに、どこか安定したところをつくってほしい。

ずーちゃん:いろんな通信・定時制高校の生徒たちに声をかけて、月に一度D×P事務所に集まって、バレンタインのチョコを作ったり、ネイルを作ったり、浴衣に合う髪飾りをつくったりしてる。あとはみんなで作業しながら、とにかくおしゃべり!毎月リピートして参加してくれる生徒もすごく多い。

クレッシェンドという授業をつくっていく中で、授業の「その後」が大事だなって感じて。確かに4回の授業を丁寧にやっていくのも大事なんだけど、4回の授業だけでは出来ないことがある。これからも高校生と繋がり続けたいって気持ちが私の中では大きかったから、アフタークレッシェンドの大切さを強く感じてた。

※アフタークレッシェンド:高校生とコンポーザー、スタッフの授業後の継続的な関わりの場。 

こういう見た目だから、授業でも金髪の子とか、メイクが濃い子とか、ネイルしてる子と関わることがすごく多かったの。でも当時D×Pにあった写真部や映画部みたいな企画に、その子たちはたぶん来ないだろうなって思った。だけどその子たちとこそ、今後も関わり続けたいって思いが私は強かった。

 インターンをやる中で、出会う高校生たちの「不安定さ」をすごく感じてたの。気分の不安定さとか、人間関係の不安定さとか。ある高校で関わった生徒で、忘れられない子がいて。その子も見た目ギャルっぽくて、授業中に話したりしてたんだけど、ある日学校を辞めちゃったの。担任の先生から「他の先輩たちにつられて遊んでるみたいです」って聞いて。別に学校を辞めることが悪いことじゃないんだけど、その子の人間関係も今、「不安定」なんじゃないかと思う。 そういう子たちに、どこか安定したところをつくって欲しかった。何か居場所があったら、ちょっと楽になるかな?と。

生徒たちにとって、そういう心の拠り所になるような場をつくりたくて、彼女たちも来てくれそうな「女子会」という名前にして、企画書を書いてたっちゃんに提案したの。 女子会は、別に「将来何したいか考えましょう」とか、そういう場じゃない。お菓子作ったり、おしゃべりしたり、ただその時を一緒に過ごすだけ。でもそれが、彼女たちとの距離を縮める一番の方法なんじゃないかなって思う。変わりゆく人間関係のなかで、この人だけはずっとそばにいてくれるなって人が一人いれば、きっと心強いと思う。

D×Pでは、安心して「ずーちゃん」でいられた。 

D×Pスタッフ:上司のたっちゃんの第一印象は?

ずーちゃん:うーん。「え、なんか私怒られてる?」って感じだった(笑)表情があまりなくて。声も淡々として話すから。「この人には曖昧なことは言えない。その場のノリで逃げ切れる人じゃない」って思った。 インターンの面談のときも、投げかけられる質問がすごく鋭くて、もっとちゃんと自分のことを考えて答えを出さないといけないなって思った。D×Pに応募したのは直感だったんだけど、そこをたっちゃんは深掘りしてくるから、「私はなんでやりたいんだろう」って本気で考えた結果、「自分の負の経験をプラスに変えたいんだ」って気づけた。 女子会の提案をしたときもそうだったの。私は感情的に動くというか、「これがしたいから!」って思って提案するんだけど、たっちゃんは「それをすることによってどうなるの?」って返してくる。私、そこまではまだ考えてなくて(笑)ある意味、D×Pは言ったらなんでもさせてもらえる環境だったから、自分の言動に責任を持てるようになったのはたっちゃんのおかげかもしれない。

D×Pスタッフ:他のインターン生はどういう存在だった?

ずーちゃん:家族みたいな感じ。私は友達といると、その友達にあった自分の役割みたいなものを考えちゃうんだよね。あの子と会うときは私は聞き役、あの子と会うときは私の面白い話を提供する、みたいな。でも家族の前ではその役割がない。D×Pもそんな感じで、別に面白い話をしなくてもいいし、人の話を無理して聞かなくてもいい。変な人ばかりだからかな?(笑)言いたいことを言えて、それでも受け入れてくれるのがD×Pのインターン生たち。

D×Pスタッフ:インターンを1年やって、ずーちゃん自身に変化はある?

ずーちゃん:肩の力を抜いて生きられるようになったかな。いつでも頑張ってる、できるずーちゃんでなきゃいけないっていうのが自分の中にはあって。でもD×Pでは良い意味で期待されてない。「今のずーちゃんのままでいいんだよ」みたいな雰囲気があったから。肩の荷が下りたっていうか、ふわっとなれた気がする。 人間味を出せるようになったのかもしれない。頑張れるときもあれば、頑張れないときもある。できる私もできない私も、D×Pは両方を見てくれて、それを「ずーちゃん」として受け入れてくれたから、安心して「ずーちゃん」でいられた。 

D×Pスタッフ:大学とD×Pのインターンを卒業して、これからどんな人になっていきたい?

ずーちゃん:今は自宅ネイルメインのネイリストとして活動しています。「ネイルで彩るささやかなトキメキ」をテーマに、ネイルをツールに女の子たちにパワーをあたえられる人になりたいと思ってる。 ネイルって人に手を触られながら対面でされる美容施術だから、すごくリラックス効果があるの。これからネイリストとしていろんな人の話を聞けたら良いなって思います。

ネイリストって、月に一度くらいしか会わない。でもそういう、ほどよい距離感の人だからこそ話せることってあると思う。この距離感って、D×Pと生徒の距離感に少し似てる気がするの。近すぎず、遠すぎず、第三者として関わっていける。そういう特徴が私には合ってるんだと思う。 人の話を聞いて元気づけるのって、カウンセラーでもできるけど、それだと私がしんどくなっちゃうかもしれない。第三者として、自分も大切にしつつ、人の心を癒せるような仕事がネイリストだと思うから、そういうネイリストに私はなりたい。

インタビュー・文責:荒木雄大(D×Pインターン広報スタッフ)

10代をひとりにしない。D×Pで、ともに働きませんか?

D×P(ディーピー)は、10代の孤立を防ぐNPOです。

「10代の孤立」は、不登校・中退・家庭内不和・経済的困難・いじめ・虐待・進路未定・無業などによって、
いくつかの安心できる場や所属先を失ったときに起こります。

D×Pは、定時制高校での活動とオンラインでの活動を掛け合わせ、10代とつながります。日常的な雑談から、生徒の困りごとを拾いサポートにつなげる学校での取り組みと全国から気軽に相談できるLINE相談で10代の孤立を防ぎます。

ひとりひとりの若者が、どんな境遇にあったとしても、
つながりが得られる状態をつくる。これがD×Pの取り組みです。

ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会をともにつくりませんか?


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