D×Pタイムズ
D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
D×P×10代

“外の世界”にも、楽しいことはいっぱいあった。ー不登校だった『よしゆきくん』と、彼が今見ている景色ー

自分に自信が持てない。本当にこれからやっていけるのかな。

そんなことを考えていたわたしが、前を向いて生きていくきっかけになったのは「そのままのあなたでいいんだよ」と言ってくれる人と出会えたことでした。

D×P(ディーピー)は、人とのつながりをつくる授業「クレッシェンド」を定時制・通信制高校のなかで実施しています。出会った高校生のひとりひとりの興味に沿ったさまざまな機会もつくっています。

クレッシェンドとは? 
通信・定時制高校で行っているD×Pの独自プログラム。高校生とD×Pのボランティア「コンポーザー」が対話する全4回の授業です。ひとりひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくります。4回の継続した授業のなかで次第に人とのつながりを得て可能性が拡がるように、音楽用語でだんだん強くという意味のクレッシェンドと名付けています。

今回話を聞くのは、クレッシェンドで出会い、その後ドイツのアートプロジェクトに参加したよしゆきくんです。

2018年の夏に、D×Pが主催した『ドイツアートプロジェクト』。アートに興味のある5人の高校生が、現代アートの最先端を走るドイツの街・ハレ(Halle)に滞在し、現地の美大生と学校の壁に絵を描きました。このプロジェクトに参加したよしゆきくんは、10歳のころから漫画家を目指す高校生。中学生のころは不登校で自宅に引きこもっていたそうです。その後入学した定時制高校で行われたクレッシェンドでD×Pと出会いました。今回はアートプロジェクトやクレッシェンドのことなどいろいろ聞いてみましたよ。

自分のほかにも絵を描くことが好きな人って世の中にいっぱいいるんやなって

D×Pスタッフ:今回のドイツが初めての海外だったんだよね?どうだった?

よしゆきくん:日本に住み慣れているので、文化の違う海外に行くことに少し緊張していたんです。でも実際に行ってみたら、むしろ楽しく過ごすことができました。

D×Pスタッフ:日本とドイツで何か違うなと思うことはあった?

よしゆきくん:ドイツの人たちは、日本人よりもテンションが高くって、フレンドリーだなって。滞在2日目に、ドイツの学生さんと親睦を深めるレクリエーションの時間があったのですが、「現地の人たちは、笑顔が絶えないな」と感じて。僕もいっしょにいて、楽しかったんです。

D×Pスタッフ:そうなんだね。壁に絵を描く体験はどうだった?

よしゆきくん:ドイツの学生さんと交流しながら描けることが一番よかったです。言葉が通じない時もあったけど、助け合って描くことができました。

よしゆきくんともう二人の参加者の子たちで描いた絵です。大きなキャンパスに思いっ切り絵が描けるなんて気持ちいいだろうな…

D×Pスタッフ:アートプロジェクトに参加して、なにか気づきはあった?

よしゆきくん:自分のほかにも絵を描くことが好きな人って世の中にいっぱいいるんやなって。

D×Pスタッフ:ということは、今までそういう人たちと関わる機会が少なかったんだね。

よしゆきくん:そうですね。学校にも1人か、2人いるくらいですから。アートプロジェクトでたくさんの絵が好きな人たちと会って、「漫画家になりたい」という思いが強くなりましたね。

D×Pスタッフ:そういえば、このプロジェクトが無料であることはどう思った?

よしゆきくん:「ほんまにタダなんか」って最初は引っかかりましたね。内心では不安もありました(笑)。

D×Pスタッフ:ドイツに行ったのは、高校生が5人とスタッフが2人だよね?

よしゆきくん:1人当たり23万円かかってるって聞きました。

D×Pスタッフ:じゃあ合計で約160万円…。

よしゆきくん:感謝感謝ですね。

D×Pスタッフ:いろんな思いを持っている方たちが寄付を下さって、D×Pのプロジェクトが成り立っていることはスタッフのわたしも「すごいな」と思っているんだ。

あまり家の外に出たくなかったし、外向的な性格じゃなかった

D×Pスタッフ:高1の時、初めてクレッシェンドに参加したんだよね?どんな感じだった?もしわたしが高校生で、外部の人が学校にやってきたらびっくりすると思うんだけど…。

よしゆきくん:当時の僕は“引きこもり精神”を持っていたんです。あまり家の外に出たくなかったし、外向的な性格じゃなかった。そんな時、あるコンポーザーさんが「引きこもりの子がちょっとでも“外の世界”の人たちと話をして、その風景を楽しく思えたらいいな」と言っていて。

D×Pスタッフ:そのコンポーザーさんの言葉を聞いてどう思った?

よしゆきくん:外の世界に出てもいいかなって。「ずっと家にいるのもなぁ…」とうすうす思っていた時期だったから。この出来事がきっかけで、ちょっとずつクレッシェンドに興味をもつようになりました。

D×Pスタッフ:そうなんだね。クレッシェンドのどのワークが、よしゆきくんにとって良かった?

よしゆきくん:『過去のジブン』ですね。高校1年生の時はコンポーザーさんの言ってくれていることが理解できなかったのですが、高校4年生になった今になって、その言葉の意味を考えさせられたり、「いろいろな苦労があって言ってくれたんだな」って思えます。

今は人と話すことが楽しくって。親にも「お前変わったな」って言われます

D×Pスタッフ:よしゆきくんは生徒会に入っているって聞いたよ。どういう経緯でそうなったの?

よしゆきくん:先生から、「入ってみないか?」とお声がかかったんです。

D×Pスタッフ:よしゆきくんが生徒会に入ったら楽しめるって先生は分かってたのかな。

よしゆきくん:先生は、そういうことを見抜くのが引くくらいうまいですからね。(笑)

D×Pスタッフ:わたしもクレッシェンドで先生とお話すると「生徒さんのことよく見てるな」って思う。

よしゆきくん:それで生徒会に入ってから、文化祭で仮装イベントを企画したりしました。その企画をしたのも、この(D×Pの)事務所に来るようになってからだったかな。

D×Pスタッフ:事務所には何で来たん?

よしゆきくん:イラスト好きな子たちが集まって一緒に絵本をつくるっていう企画を事務所で開催してたので、それに参加しました。元々あるストーリーを土台に、絵の部分をみんなで想像して描いてみようっていうものでした。

D×Pスタッフ:それを完成させていくうちに何かがあったっていうこと?

よしゆきくん:内気(な性格)だったのが、外に出てきたっていうか。

D×Pスタッフ:今はこんなに話をしてくれるから、想像がつかないな。

よしゆきくん:昔はこんなに喋らなかったんです。でも今は人と話すことが楽しくって。親にも「お前変わったな」って言われます。家の外に出るようになったことにもびっくりされていて。

ちょっとでも外の世界を知ったら、楽しいことは案外いっぱいあるのかなって

D×Pスタッフ:よしゆきくんは生徒会以外に4つの部活に入っているんだよね。引きこもっていた過去があると信じられないくらいに活動的だね。

よしゆきくん:D×Pのコンポーザーさんやスタッフと出会ったことが、僕にとってはとても大きかったんです。

D×Pスタッフ:そうしたら、最後によしゆきくんがみんなに伝えたいことを教えてください。

よしゆきくん:僕は、外に出ることがなかなかできなかったのですが、D×Pのみなさんと関わりを持ってから、“外の世界”の見え方がけっこう変わってきたんです。だから、外とのつながりを持てたり、興味のあることに思い切って参加すると、これからの人生が楽しくなると思います。ずっと家にいるのではなくて、ちょっとでも外の世界を知ったら、楽しいことは案外いっぱいあるのかなって。

よしゆきくんは来年度からデザインの専門学校に通います。

「独学ばかりだったから基礎を学びたい」
そう話してくれました。

過去に引きこもっていた彼は、学校の先生やD×Pのプログラムをきっかけに、少しずつ“外の世界”に踏み出していきました。

こんなふうに、これからもわたしたちD×Pは
さまざまなバックグラウンドを持った高校生ひとりひとりの“一歩”を応援していきたいと思っています。

インタビュー/文責:伊森香南(当時D×P広報インターン)

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D×Pは、スタッフやボランティアの大人が定時制高校へ行き、授業や校内居場所事業で高校生ひとりひとりと「つながり」をつくっています。そして、高校生の好きなことや興味などをきっかけに仕事体験を企画し、進路を考えるきっかけやまだ見ぬ世界と出会う機会をつくっています。

そして、これらの取り組みは全て、D×Pに共感してくださる方の寄付で運営しているんです。よかったら、あなたも「寄付」を通じて、この取り組みに参加しませんか?


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