「何かしたい」という気持ちに、ブレーキをかけさせない。D×Pがファンドレイジングで大事にしていること
さまざまな困難や生きづらさに直面する若者たちをサポートするD×Pですが、活動資金の約8割を多くの方からの寄付金でまかなっています。
「若者のために何かできることはないかな…」と感じた方々の思いを、取りこぼすことなく有効に若者のサポートにつなげていくために手を尽くすのが、ファンドレイジング担当の岡田さんです。
“預けたお金は適切に使われているのだろうか?”など、寄付者さんが当然に持つであろう、さまざまな疑問になるべく先回りし、不安を払拭することを大事にしているという岡田さんに、普段のお仕事や寄付者の皆さんへの思いを聞きました。(D×Pスタッフインタビュー第8回)
寄付者さんと団体をつなぐ架け橋として
──岡田さんは、寄付を募り、寄付者の方々に向き合うという非常に重要なミッションに取り組まれていますね。改めて、業務について教えていただけますか。
大きく2つの業務を担当しています。ひとつは月額寄付サポーターを増やすための活動で、広告運用やウェビナー(オンラインでの活動説明会)の開催、これまで寄付していただいた方や、D×Pに興味を持ってくださる方にメールやSNSを使っての活動報告です。
もうひとつは、寄付者さんの個人情報管理や質問対応、データ整理などの業務です。これらを通じて、寄付者の方々との信頼関係を築き、団体の活動を支える役割を担っています。
──新たな寄付者を増やすことと、すでにいる寄付者さんとの信頼関係を築くこと、両輪で取り組まれているんですね。
そうですね。根本は同じで、D×Pという団体への信頼感を持っていただくことが何より重要だと思っています。寄付者さんから寄せられるご意見は全て自分で見て、皆さんの思いをつぶさに把握することを大事にしています。問い合わせやご意見には1営業日以内に対応するということを目標にチーム体制をつくり、できるだけ早くお返事するようにしています。
寄付者さんからの声は本当に貴重で、例えば以前、ある方から「寄附金控除(※)の計算方法がわかりにくい」という声をいただいたことがあり、現在では寄附金控除のシミュレーションツールをサイト上で紹介しています。おひとりのニーズは、数多くの寄付者さんのニーズである可能性も高く、こうした声を取りこぼさないようになるべく早く、適切に対応したいと考えています。
※個人が国や地方公共団体、社会福祉法人、一定の認定NPO法人などに対して寄付をした場合に認められる所得税の所得控除の制度のこと
──寄付者さん・寄付額を増やすためのマーケティングは、いわゆる一般商材のマーケティングと違った部分もあるかと思いますが、難しさはありますか?
一般的な商品のマーケティングに比べると、寄付の場合は人それぞれ動機がかなり異なる点が特徴的だと思っています。例えば、ある人は若者が自分の未来に希望がもてる社会をつくるという団体のビジョンに共感して寄付をするかもしれませんし、別の人は個人的な経験から寄付を決めるかもしれません。うちのメンバーを応援したいとか、もっとカジュアルな気持ちで参加してくださる方もいます。
そうした幅の広さは、社会をそのまま反映してもいると思っていて、言葉は難しいですが非常に面白いなと感じています。
変数が多いので難しさももちろんありますが、寄付に関心を寄せてくださる皆さんの思いを汲み取っていきたいなと思っています。
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──具体的には、どのような工夫をされていますか?
とにかく、寄付を検討していただく際の“障壁”を取り除くことを意識しています。
例えば、サイトにアクセスいただいた時にわかりやすい場所に寄付への導線があるなどもすごく重要なんですよね。寄付金の使い道を明確に伝えたり、寄付をしようと思った方が安心して行動に移せる環境を整えるなど、想定できるハードルをなるべく全て取り除きたいと思っています。
例えば、D×Pでは、団体の活動説明のためのウェビナーを週に3回実施しています。結構な頻度だと思うのですが、それも、D×Pに興味関心がわいたタイミングで「すぐに知ることができる」機会を用意しておくための一つです。
「D×Pはどんなことをしているのか」「寄付をしてみようかな」という思いを持ってくださった方の気持ちを、なるべく若者の支援につなげられるように、と心がけています。
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──そのほかに、お仕事を進める中で大事にしていることはありますか?
業務を効率的に回すということは、とても強く意識しています。
「若者の課題を解決してほしい」という期待や希望を託して寄付してくださったお金の中から私の人件費も出ていると考えると、効率よく業務を遂行することは非常に重要だと考えています。
一方、現場で若者と並走しているメンバーは「効率」だけを考えてはいけないと思うんですよね。若者と向き合い、話を聞いたり一緒に道を模索していくのはとても時間がかかること。現場のメンバーには、目の前の若者たちとの対話に集中してほしいからこそ、私は私で、自分の役割を常に十二分に発揮することに集中しています。
共感の対象が、若者から寄付者に…
──岡田さんは8年ほどD×Pで働かれています。そもそもどういうきっかけでD×Pに参加されたのでしょうか
SNSでD×Pの発信を目にしたのがきっかけでした。「こんなことをやってるNPOがあるんだ」と興味がわいて……。というのも、僕自身がかつて、高校時代に孤独な気持ちを抱えて過ごしていた時期があったんです。
もともと普通科の高校に通っていたのですが、家庭や自分自身の状況的に厳しくなって、半年で退学し、その後、通信制高校に通い直したことがあり、いま振り返るとしんどい時期だったなと思います。
当時D×Pが通信制高校の中で高校生と若者が対話する事業を実施しており、「あの時の自分だったら、この授業を受けていたかもしれない」と感じたことが大きかったです。当時の自分が受けたかったサポートを、いまの若者たちに届けたいという思いは原点にありますね。
──実際に8年働いてみて、その思いはどのように変化したり、あるいは変わっていなかったりするのでしょう。
働き始めた当初は、若者の方に感情移入する部分が大きかったのですが、いまでは寄付者のみなさんに共感する気持ちが強くなってきた気がしていますね。
先ほどお話しましたが、自分は業務の効率化を常に意識している反面、現場で若者と向き合い、寄り添っているメンバーには、とことんそれをやってほしいと思っているんですよね。ある意味で、任せているというか。それって、寄付者さんの気持ちにも近いのかなと思うんです。寄付という形でD×Pに任せたり託したりしてくださっているわけじゃないですか。
信じて任せる、という意味では寄付者さんにスタンスが近くなってきているのは感じますね。
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──D×Pタイムズの過去の記事でも紹介してきましたが、日本人は国際的に見て寄付へのハードルを高く感じる傾向があったり、NPOなどソーシャルセクターへの信頼性が低いという話もあります。その最前線にいる岡田さんは、寄付を募る難しさをどう感じていますか
もちろん、日々大変なことばかりです。寄付額やサポーターさんの数が目標に達しない時も多々あり、悔しさや歯痒さもあります。
ただ、寄付へのハードルって本当に高いのかな?と大前提を疑い、そう思う背景に対する解像度をあげたいな、とは常日頃思うんです。大きな災害が起きた時、コンビニの募金箱にお金を入れる人を何度も見たことがあります。「困っている人に何かしたい」と思う気持ちって、そんなに特殊でも特別でもない気がするんです。
人が寄付をするハードルが高いのではなく、寄付を集める側が「(集める)ハードルが高い」といってしまっている側面もあるのではないか。そしてそれは、NPO側が現場で見ている課題を、世間や社会が感じている課題意識とマッチさせきれていないところにも要因があるんじゃないかと思っています。
広報・ファンドレイジングの仕事の本質は、人々の中にある課題意識を察知し、自分たちの活動にしっかりつなぎ合わせていくことなんじゃないかと私は思います。
もしも若者の課題に関心を持っていても、いまは寄付という選択肢を選ばない方もいると思います。あるいは、若者を取り巻く課題にいまは関心がないという方も。そういう方々が、何かしらのきっかけで「若者のサポートを寄付を通じてしてみたい」と思った時に、「D×Pへの寄付」という手段を思い出してもらえるように、広報・ファンドレイジングは一体となって発信していく必要があると思います。
──最後に、寄付者やこれから寄付者になってくださるかもしれない方々に、是非一言お願いします。
寄付をしていただく、お金や期待を託していただけるというのは、とても貴重なことだと思っています。こうした思いを無駄にしないことを最優先に考え、サポートを必要とする若者たちのために使っていきます。
いまでも、これから先の未来でも、「困っている若者のためにできることを探したい」と思われた方がいたら、是非D×Pのことを思い出していただけたら幸いです。
責任をもって思いをお預かりします。
聞き手・執筆:南麻理江(株式会社湯気)/編集:熊井かおり
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