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人は、出会いさえすればなんとかなる。D×P広報の岩井純一さんが信じていること、目指している世界。

今回、D×Pで働く人の日常や本音を映す「スタッフインタビュー」に登場してもらうのは、広報・ファンドレイジングの部門で働く岩井純一さん。チームのなかでは「がんちゃん」の愛称で親しまれています。

NPOの発信には、一般企業とは異なる特有の難しさやジレンマも多々ありますが、持ち前の明るさと「人と人をつなぐ力」で、いつでも周囲を明るくしてくれる姿が印象的な岩井さん。

学生時代は国際協力に関心を持ち、東南アジアを中心に子どもたちの支援に携わりました。民間企業に就職しながらもボランティアでNPOに関わり続け、2016年から本職として認定NPO法人フローレンス(子育ての社会課題の解決のためさまざまな事業を展開)に飛び込みました。そして2024年2月からD×Pへ。

ライフワークとして、NPOやソーシャルセクターで働く人、関心がある人たちをつなぐ「ソーシャルバー」という取り組みも企画。持ち前の軽やかなフットワークで多くの人たちの出会いの場を生み出しています。

子ども時代の体験で実感する「出会い」の大切さ

──岩井さんは子どもに関連するNPOでの経験が長いですよね。社会課題や、支援活動に興味を持つようになったきっかけを教えていただけますか?

僕自身、子ども時代は色々と苦労があって、学校に通いづらい時期もあり、振り返ってみるとなかなか大変だったな、と思います。中学校は凄まじく荒れていて、まともに勉強できるような環境じゃなくて、義務教育をちゃんと受けてこなかったんです。

中学の先生たちのなかには、荒れてる生徒には関わらないというスタンスの人もいて、「学校に来なくていい」「お前たちには生きてる価値がない」とまで言われたこともあります。

でも、中3の担任の先生が「お前は変われるから大丈夫」と声をかけてくれる人で、高校進学に際しても手を尽くしてくれました。母が僕を信じてくれたのも大きかったです。

また、僕の子ども時代は「地域」というものがまだ機能していて、「ウチでご飯を食べて行きなよ」「遊んでいきなよ」と声をかけてくれる人がいました。いろんな大人たちの存在に助けられ、極端な言い方をすると「生き延びることができた」という気がします。

子どもは、自分の力だけではどうすることもできないことが多いので、誰と出会うかが大事、ということは自分の体験からも思います。今度は僕が子どもたちを支えられる存在でありたい、と思ったのが、いまの仕事につながる一番最初の起点です。

学生時代には国際協力に興味が、ありさまざまな国を訪れた。

「見えづらい」若者たちの困難を、どう伝えるか

──それ以降、岩井さんは学生時代から現在に至るまで、子どもの支援に尽力するさまざまなNPOに関わってきました。D×Pが向き合う「10代の孤立」という問題について、D×Pに参加したことで新たに発見したことはありますか?

あくまでも僕の主観なのですが、昔って、若者に関するいろんな問題がいまより目に見えやすかった気がするんです。僕の中学もそうでしたが、目に見えて「荒れていた」ので。

でもいま、グリ下に集まってきている若者たちがどんな生きづらさや困りごとを抱えているのか、パッと見てもわからないと思うんですよ。虐待の経験があったり、家族との関係に問題があったり、いろんなケースがありますが、問題が見えづらくなっている。本人たちも自分をうまく客観視できず、何も悪くないのに「自分のせいだ」と思い込んでしまう状況も見受けられます。

──そうした「見えづらさ」を可視化して、若者たちを取り巻く困難について多くの人に知ってもらうためにも、岩井さんの「広報」のお仕事は大事なのではないでしょうか。

難しいのは、「こういう子ども・若者たちがいます」「こんな大変な境遇に置かれています」と発信することで、差別や偏見を再生産することにつながってしまわないか、という点です。困っている人たちに対して、「あなたはこういう存在」と一方的に決めつけてしまうことにもなってしまいます。どんな発信が最適なのかはいつも試行錯誤で、チーム内で状況に応じてかなり話し合っていますね。

大事なのはやり続けること。微力ではあるが無力ではない

──発信するにあたり、注意している点、心がけている点を教えてください。

D×Pでは「否定せず関わる」という理念を掲げています。僕自身も、断定や、自分自身の主観で「こうあるべき」といった言葉遣いは絶対にしない、といつも気をつけています。

活動のなかで集計したデータを寄付者さんに報告したり、新しい寄付獲得のために使いたい、というときも、「いまの若者はこうだ」という打ち出し方をしないよう、最適な表現を模索します。常に考え続けている組織だと思いますね。

たぶん、「わかりやすい言葉」は使おうと思えばいくらでも使えるんです。いまの世の中、パッと人の目を引くような、バズる言葉遣いが主流なのもわかっています。でも「大きい主語」でくくらず、ちゃんとていねいにひとりひとりの存在に思いをはせていきたい。不器用と言われるかもしれないけれど、D×Pのやり方を理解してくださる方はたくさんいて、だからこそ約3,200人もの月額寄付サポーターの方が応援してくださっているのだと思います。

──安易な「わかりやすさ」に逃げないために、地道な努力と、細やかな配慮が求められると思います。しかも正解や王道はない。くじけそうになることはないですか?

僕、くじけたり落ち込んだりっていうのは、基本ないんですよね(笑)。D×Pに限らず、社会課題に向き合うなかで無力感に苛まれてしまい、活動から離れてしまう人はこの業界に多い。でも、大事なのはやり続けること。「微力ではあるが無力ではない」という有名な言葉もありますが、続けていれば小さな変化の積み重ねが大きな広がりにつながると信じています。「ゼロでなければいい」と思ってるんです。

人は、出会いさえすればなんとかなる

──岩井さんは、NPOをはじめソーシャルセクターの関係者や、その仕事に興味のある人がつながることができる「ソーシャルバー」という場も企画しています。それは、どんな思いから?

本職でNPOを8年間やってきました。「新公益連盟」という150以上のソーシャルセクターが加盟する団体の事務局をやっていたこともあり、尊敬できる方、素晴らしい事業とたくさん出会ってきました。でも、それがまだまだ世の中に知られていない現実があると思います。

また、先ほどもお伝えしたとおり、無力感に苛まれてしまい、活動から離れていってしまう人たちを結構見てきました。でも、やっていることは決して無駄ではないし、同じような悩みを抱えている人たちはたくさんいる。いろんな人たちがつながることで、何か新しい発見や新しい関係が生まれるきっかけになれば、と思ってやっています。
僕はそういう場作りが大好きなんですよ。みんながやりたいことをうまく引き出したり、ポテンシャルを最大化できたら本当に嬉しい。人は、出会いさえすればなんとかなると僕は思ってるんです。

ソーシャルバーはこれまでに11回開催。東京、大阪、京都など各地で実施しています。


──最後に、この記事を読んでくれた人に伝えたいことはありますか?

ひとりひとりに役割や自分にあったやり方、関わり方があると思っていて、NPOで働いてますとか、寄付をめっちゃしてますとか、そういう人たちだけがすごいわけでは決してないはずです。みんな、電車やバスで席を譲ったり、横断歩道で困っている人を手伝ったり、白杖の人がいたら声をかけたり、ということを日常的にしてるはずですよね。そういうひとつひとつの行動がめちゃくちゃ大事だと思っていて。

誰かと比較したり、自分の限界を決めつけたりせずに、とにかくできる範囲でできることをやってみてほしいです。ただ気になったテーマについて調べてみるだけでもいい、イベントに行くでもいい、ボランティアをするでもいい。日本の1億2000万人が動いたら、すごいことになると思うんですよね。

聞き手・執筆:清藤千秋・南麻理江(株式会社湯気)/編集:熊井かおり

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