【繁華街にユースセンター|グリ下近く】10代を支援するD×Pとリノベーションのクジラが“居場所づくりのデザイン”で連携

10代の進路相談や居場所づくりを支援する認定NPO法人D×Pがまちごとホテル「SEKAI HOTEL」を開発・運営するクジラと連携し、ユースセンターを開設

孤立する10代の支援を行なう認定NPO法人D×P(ディーピー)は、地方創生モデルとしてまちごとホテル「SEKAI HOTEL(セカイホテル)」を開発・運営するクジラ株式会社(大阪市北区、代表取締役:矢野浩一)と連携し、通称「グリ下」と呼ばれる大阪ミナミエリアにて全国でも希少な繁華街に位置するユースセンターを開設しました。

繁華街エリアでのユースセンター開設

ユースセンターとは、ユース(若者、特に中高生世代)にとっての家でもない、学校でもない「第三の居場所」としての役割を担う施設です。D×Pが今回開設するユースセンターは、大阪市中央区、ミナミエリアにて「繁華街エリアにある」という稀少かつ重要な役割も担います。

日々の生活に悩みや苦しみを抱える若者が多い繁華街にてユースセンターを運営することで、より多くの若者にリーチすることができるメリットを有する反面、繁華街エリアのテナント賃料は高く、現場トラブルに発展するケースも多いというデメリットもあるため、開設・運営に踏み切る事業者も少ないのが現状でした。

開設に至った経緯

私たちD×Pは、2022年8月よりミナミエリアにおける通称「グリ下」において、若者にとって安心できる居場所としてフリーカフェを運営してきました。

以前から、若者のためのLINE相談から食糧支援・現金給付などの実物支援につなげる「ユキサキチャット」を運営していましたが、LINE相談という機会まで辿り着かない若者が多くいることを課題として感じていました。

コロナ禍においてグリ下に集まる若者が増加する様を目の当たりにしたことで、若者の安心できる居場所としてのフリーカフェを開設しましたが、「ご飯を食べる場所がない」「ゆっくり寝る場所がない」という多くの若者と接する中で、“若者が不安なく、しっかりとエネルギーを溜められる場所”の必要性を痛感し、今回のユースセンター開設計画に至りました。

“居場所づくりのデザイン”をクジラに依頼

さまざまな居場所づくりのデザインにチャレンジするクジラと連携し、ユースセンターの開設計画を進めることとしました。

▼クジラが取り組む事業
•SEKAI HOTEL:地域活性・地方創生モデルとして地域に新たなコミュニティをつくる
•KUJILIKE(クジライク):児童養護施設を施設の子どもたちと一緒にリノベーションする
•VISIONde Office(ヴィジョンデ オフィス):会社のヴィジョンをスタッフが日々体感するオフィスづくり

今回のユースセンターにおいて、日々の生活に居づらさを感じる10代にとって訪れやすい場所、居心地の良い場所を作るべく、クジラに蓄積された“居場所作りのデザインノウハウ”をD×Pのユースセンター事業に活用できると考えました。

SEKAI HOTEL:https://www.sekaihotel.jp/
KUJILIKE:https://kujira.ltd/magazine/30691/
VISIONde Office(サイバーポートと協業):https://visionde.jp/

“10代の居心地”を空間デザインの視点から見直した

成人年齢が18歳に引き下げられたことで、社会的には成人扱いでも、まだまだ周囲の支援や理解が必要な10代はたくさんいます。D×P・クジラによるディスカッションでは、まずグリ下に集まる10代の価値観などについてD×Pスタッフの経験をもとに、“10代にとっての居心地の良い場所”をシーンごとに整理するところから始めました。

次に、D×Pの活動における知見をより具体的に言語化するためのディスカッションも行い、D×Pの「支援」は段階的にオペレーションが変わることを再認識しました。

若者の居心地とD×Pスタッフによる支援オペレーションを意識し、若者の主体的な行動をゴールイメージとした「自分の意見が尊重され、主体的な行動ができるユースセンター」として認知されるデザインを模索しました。

•他人の目は気にしてほしくないが、個室だらけのユースセンターは違う
•ユースセンター内での過ごし方には自由度を持たせたい
•イベントを開催したいので、開放感も担保したい

しかし、悩みを抱える10代にとっての居心地の良い空間を実現するには、「他人を気にしなくていい」という観点では閉鎖的な設計になってしまう点、「他人とのコミュニケーションの機会を通じて、自身の可能性に気づいてほしい」という観点では開放的な設計にしたいという矛盾する部分を解決するアイデアが必要でした。

そして、D×P・クジラによる多くのディスカッションの結果、「他人の目線が気にならない」「開放的」「使い方に自由度がある」を重要視し、ユースセンター内に階段ベンチを作る構想に至りました。

まちづくりでしばしば見られる階段ベンチという設計モデルは、座る場所を自分で決めることができ、段差ごとに利用者の目線の高さや向きにバラつきを生むため、今回のユースセンターのデザインに最適なアイデアだと考えました。座る位置や過ごし方だけでなく、クッションや植栽などを利用者と一緒に選んでいくという空間づくりの自由度も実現しています。

クジラ株式会社 代表取締役 矢野浩一 氏より

“居場所作り”は地域活性においても、会社組織においても「訪れたくなるワクワク感」と「長時間過ごしても違和感を感じないこと」が必要であり、この点においてはユースセンターも同じだと考えデザイン・施工させていただきました。

かねてから交流のあった今井さんから相談を頂いた時はとても嬉しく思いました。D×Pの活動が、ひとりでも多くの10代に届いてほしいと心から願っております。

認定NPO法人D×P 理事長 今井紀明より

「おおー、◯◯」と何人もテントにやってくる。時は1月。寒い中、ヒーターもあるわけでもないのに、D×Pのグリ下にあるテントに20人以上の19歳、20歳前後の子たちが集まってくる。中には高校生もいたりする。スタッフから聞くと小中学生もきているという。
大阪のグリ下には親に頼れないなど、様々な事情を持った子たちがやってきます。スタッフや友人同士で話したり、ごはんを食べたり、思い思いに数時間過ごしています。しかし、テントで話をしていて時間が経ってくると、親との関係性の悩みや妊娠していること、プライベートで非常に傷ついている話なども聞いたりします。
彼らと関係性をつくっていく中で、もっと一緒にご飯をつくったり、安心して話せたりする場が必要だと感じてきました。

子どもたちとって居場所とは、他愛のない話もしつつ、人と出会ったり、様々な経験をしたりする場所です。そこから「なぁ、ここ行ってみたいんだけど」「実はもう一回高校に行きたくて」など、普段とは別の会話が生まれます。ユースセンターは安心して過ごせる場でありつつ、これからを一緒に語り、彼らが主体的に活動できる場にしていきたいと思っています。

ユースセンターはオープンしましたが、完成はこれからです。これからくる子たちと内装やデザインなどを一緒につくり上げていきます。その意味では、完成はないのかもしれません。今後は地域にも関わるなど、さまざまなことが起こると思います。いい場を、集ってくれる人たちと一緒につくっていきたいと思います。


認定NPO法人D×P(ディーピー)は、不登校・中退・経済的困難など、さまざまな境遇にある10代の孤立を解決するNPO。学校とLINE相談で10代と出会い、困った時に頼れる人とのつながりをつくります。定時制高校では、高校生と社会人が対話する授業や校内居場所事業を実施。LINE相談事業「ユキサキチャット」は全国から相談を受け付けています。コロナ禍では、困窮する10代へ食糧支援・現金給付を実施しています。

※D×Pは、2015年6月8日付で、D×Pは大阪市の認定を受けた「認定NPO法人」です。認定NPO法人とは、活動内容が適正であるとして各自治体から認定をうけた団体のことを指し、認定NPO法人へご寄付は税控除の対象となります。

本件に関するお問い合わせは総合お問い合わせフォームよりご連絡ください。

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